前書き
タイラー・ハミルトンが血液ドーピングでポジティブとされた時、彼は生まれれる事のなかった幻の双子の兄弟の血の名残りだと主張した。
本書を、タイラーの溢れる想像力が生み出した悲劇の<消された>双子と、そして、ランス・アームストロングの名高い<失われた玉の片割れ>に捧げます。
願わくば、彼らに安らかな眠りがあらん事を。
懺悔
僕はとても長い間、この事を自分の胸だけにしまっていた。そして今、他のサイクリスト達全てのお許しを得たので、僕はこの胸のつかえを吐き出す事が出来る。そう、ついに僕はこの重荷を白日の下に晒し、そしてありのままに生きるのだ(訳注:レリゴー)。
告白するにあたって、僕はチーム、チームドクター、そしてライバル達から圧力をかけられた。なので、僕には懺悔する以外の選択肢はなかった。たとえそれが自分の責任ではなかったとしてもだ。(自分の責任じゃない。だから僕は、いかなる方法でも罰を受けるべきではないと主張しておく) 僕の過去の過ちが、周りにかけた迷惑を僕は深く後悔している。
僕は以下の事を懺悔する。
- 僕はしばしば、食パンのビニール袋を留めておくあのクリップを外したままにした。(イラッとしたろ?)
- 僕は何回か、赤信号がチカチカしている時に横断歩道を渡ってしまった。(ワイルドだろ?)
- スーパーの店員が、$14のアーモンドバターに間違えて$5の値札をつけた時、分かってはいたがしれっとレジを通してしまった。(セコいだろ?)
誰もが<悪事>に手を染めていた。そして<チームぐるみ>だった。僕はそれに従うしかなかった。僕は2006年にこういった悪事から全て手を引き、それ以来、二度と手を出していない。
本題に入ろう。僕はこんな感じのスキャンダルにウンザリしている。このスポーツの暗黒面の暴露って奴にもウンザリだ。同じスキャンダルネタを手を変え品を変え書いては金儲けしている輩にもウンザリだ。君達がウンザリしている事も知っている。
でも、こんな考え方もある。ニセモノのロレックスが作られるのは、煌めく本物がどこかにあるからだ。そして同じように純粋で光り輝く<本物のプロの世界>がどこかにある。
まるで君が初めてバイクで走り出してその頬に風を感じた時のように、全てが純粋で美しい世界。
<本物のプロサイクリングの世界>が。
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Phil Gaimon