2014年6月15日日曜日

第一章: <掴んだ藁>: TAKE WHAT YOU CAN GET : Pro Cycling on $10 a Day: From Fat Kid to Euro Pro

 プロ・サイクリストになろうなんて思った事はなかった。
その思いはある日、僕の心に突然灯ったんだ。それまではいつも漠然と「何かしなくちゃ」と焦っていた。

僕の歩んできた道は、他のプロ・サイクリストよりかなり変わっていると思う。
家族の誰もが自転車レースの経験はない。友達もそうだった。実を言うと、僕の周りには運動が得意な人や、テレビで熱心にスポーツ観戦をする人すらいなかった。
どういうわけか、僕は自転車と出会い、そしてプロ・サイクリングに魅了された。

自転車に出会う前、いつも僕をせき立てていた「何かしなくちゃ」という焦りは何だったのか? 何を自分が本当はしたかったのか、実は今でもはっきりとは分からない。でも、今となっては特に知りたいとも思わないね。

高校1年(10th-grade)の技術の授業で職業適性調査を受けた。僕達が興味、好み、そして得意な事を入力すると、コンピューターが自分達に適した職業を答えてくれる。コンピューターが弾きだした僕の適正職業は、
「プロ・アスリート または 農業/林業」
だった。僕はアトランタの郊外の住宅地に住んでいて、周りに農家はなかった。そして、それまで一度も木に登ったり、農場に足を踏み入れようと思った事はなかった。だから「農業/林業」の線はないなと思った。また、当時の僕は慎重179センチの肥満体で、運動なんて大嫌いだった。僕はその結果に笑い、技術の先生をからかった。でも、今思うと、ベック先生(技術担任)にその事を謝らなければいけないね。

僕の姉さんは学校のスターだった。先生達はスターである姉さんと同じファミリーネームを持つ僕に最初はいつも過剰な期待を持ったけど、結局はヴァレリー(姉)のように期待に添う事は出来なかった。一年生の英語の授業で、僕は最初に教室に入ったけど、さっさと一番後ろの列に座った。

「後ろの席でかくれんぼ? 隠れてたって先生には分かるわよ?」
「僕がどこにいたって先生は見つけちゃいますよね!」

僕は先生に言った。


二年生からの酷い食生活と運動不足で、僕のお腹は浮き輪を巻き付けたようにパンパンだった。思春期やら中二病やらで僕の成績はがた落ちし、ついには両親が学校に呼ばれて、僕がクラスで浮いている(訳注:クラスの皆から気取りやのうざ男と思われている)と先生から文句を言われる始末。<気取りやのうざ男?>誰がって? もちろん僕がさ!それまで荒れた生活をしていても現実に困る事はなかったけど、でも、徐々にやばい雰囲気になってきたんだ。


そんな時、僕は自転車と出会ったんだ。





Phil Gaimon