2014年6月19日木曜日

第一章: <掴んだ藁-2>: TAKE WHAT YOU CAN GET : Pro Cycling on $10 a Day: From Fat Kid to Euro Pro

   僕が中古のトレック・クロスバイクを買った時、まさか自転車が将来自分の職業になるなんて思ってもみなかった。そいつは単なる移動の為の足だったんだ。アトランタ郊外から友達の家まで、僕は自転車で遊びにいった。友達の家ではお互いの宿題を写したり、ビデオ・ゲームをしたりして時間をつぶした。
そんな時、僕は自転車に乗っているとイライラした気分がすっきりするって事を発見した。自転車で家から外に飛び出す事で、進学の事や、日常や未来に関するいろんなゴタゴタをしばらく忘れられる事に気が付いたんだ。自転車で街を飛び出して郊外に出ると、そこには僕の知らない世界が拡がっていた。おまけに、そんな風に自転車で2、3ヶ月走り回っていたら、僕の36号のきつきつだったズボンは、ベルトが必要なぐらいにダボダボになった。

  18の時、両親は僕に車を買ってくれた。でも、僕のチャリ中毒を治すには手遅れだった。友達と遊ぶ為の足だった自転車は、いまや乗る事そのものが僕の唯一のミッションになった。自転車に乗る以外の事は一切したくなかった。僕は少しづつ目標を立て、それが健康的な好循環になった。僕はいつも同じコースを走った。家からきっちり10マイル(16キロメートル)。混雑したドライブウェイの側道を抜け、友達のカイリンの家の近くの公園のハイキングコースを越え、街の反対側のモールをまわった。Tシャツにジーンズという出で立ちで、僕は毎日夢中で走った。一周30分を切ろうと挑戦し続けた。

  自転車は僕の物欲も満たしてくれた。僕は少しづつ中古バイクの売り買いをして僅かばかりのお金を貯め、それでもっとクールな自転車を買い続けた。

  僕は平均時速20マイル(32キロメートル)をこのコースで狙っていたが、それはとうとう叶わなかった。でもその挑戦の結果、僕の問題の大部分はいつのまにか解決していた。外で自転車に乗り続けた事で、僕のアレルギーは直っていた。そして体重は40ポンド(18キログラム)落ちた。僕のズボンのサイズは30インチになった。高校を卒業する時には成績を上げる事も出来た。僕はより明るくなり、もっと自信がつき、そして人づきあいが良くなった。以前よりハッピーになれた。必要な時に前向きになれて、そして向上出来るってとても嬉しい。なによりも、下を見るといつも目についた僕のお腹の肉の浮き輪はもうどこにもない。


僕は自分に満足していた。




Phil Gaimon