2013年9月26日木曜日

vol.3 禿げ山の一夜

「ともかくっ!今のウチらの状況って、かなり危機的だと思うんだ。分かってる?」

2013年7月6日 20:07 サン・ジルタのとあるホテルの閉店後のレストラン。
ガーミンのJV監督は口角泡を飛ばしながらもみあげを立てて(ちょうどダリの髭風に)演説していた。

極秘裏に集まったガーミン、クイックステップ、BMC、ベルキン、RSLTの首脳陣と選手達が沈痛な表情で集合していた。

ルカ・グエルチレナ(RSLT監督)は浮かない顔をしてつぶやいた。

「いや、あの傾斜であの登坂ペースだろ?正直打つ手はないだろう?」

クィックステップのフラマーティー監督はホワイトボードの前に立った。
「まだ最初の休息日も迎えていないというのに、フルームによる犠牲者は3人だ。」

「モンペリエでダミアーノが喰われた。これで奴は第2形態に進化」
クネゴの笑顔の写真にバッテンが引かれる。

「アルピでカデルを捕食。これで奴は第3形態に進化。」
嫁とくつろぐエヴァンスの写真には三重線でバッテンが引かれた。


ルカ・グエルチレナ(RSLT監督)は後を引き継ぐ。

「今日はウチのアンディが喰われそうになったがギリギリで吐き出された。恐ろしかった事だろう..」
アンディ「しくしくしくしくしくしく…」

一同は何か言いたげな表情でアンディを見つめたが、会議は進む。


「次に準エース級以上の犠牲者が出た場合、フルームは最終形態になってしまう。」
JV監督はLEONで見つけて通販で買った眼鏡を直しながら一同を睨め回す。


「すみません、最終形態になったらフルーミーはどんな感じになるんで?」

ダニエル・マーティンが鏡先輩から出されたお題、「めちゃキモいガッツポーズ」の練習をしながら聞く。


JV監督は沈痛な表情で告げた。

「……….カンチェだ….。」

一同「へ?」


「ホテル・ドネームの貴重品入れに補完されていた予言の書にはこうある。」

「四人目の贄を捕食せしめし時、天空から舞い降りしカンチェ・ノアールとそのもの、融合すべし。」


一同「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


阿鼻叫喚の地獄絵図だった。


ルカ・グエルチレナ(RSLT監督)は冷静に聞いた。


「その場合、フルームはウチのチーム所属という事にならないかな?」



完全に無視してJV監督は続ける。

「今回、さる筋の方が、フルーム対策の特別対策アドバイザーに就任してくださった。」

巨大なTVモニターのモニターを示す。


「フルームに詳しいさる筋のお方。ミスターWだ!」


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モニターに映しだされたのはハッカー集団Anonymousで有名になった道化の仮面をかぶった男。
仮面以外は服をきておらず、ガリガリであった。


「ファッキン・メーン、ユー・アスホール」
ラップ風の動作で男は語った。
その下にはドイツ語、イタリア語、フランス語の同時翻訳が出た。

(皆さんにお会い出来て大変うれしい。私はミスターWと申す善意の第三者です。)


シルヴァン・シャヴァネルがいつものように唐突に空気を読まずに聞いた。

「ミスターW。後ろの壁にかかっているジャージはSKYのものですか?」


ミスターWの上半身は現代舞踏のように不思議な揺れを始めた。
カメラに写っていない足を後ろの反らせて親指でジャージをひっぺがそうとしているのだ。


「ダム・シット、マイファニーブラザー、ゴーヘルアンドアウェイ」
 (なんの話でしょう?シルヴァン。連日の猛暑で幻をご覧になったのでは?御身大事に。)

「エアヘッド・ボーンヘッド・ブロックヘッド
(本題に入るが通常の方法で君達が対処出来るようなレベルにフルームはもういない)

「ファッキン・サノバビ・オールウィークアロング」
(君達に今出来る事、それはチームの枠を超えての共闘である。)

「オーノー・ブレンクラッカー・インジェジェクション・プリーズ・マイ・ゼントウヨウ」
(お前たちはロードの不文律とか騎士道精神とか、そういう意味のないものにこだわっているのだろう?」

「ダム・ヘル・ゴーヘル・ドーン・オブ・ザ・デッド」
(不文律なぞ所詮強者の為のルール。明文化されていない意味を考えた事があるか?)
(貧乏人には貧乏人の戦いがある。結託し、チーム選抜で鉄砲玉を出し、一人一殺でSKYのアシストを殺り、フルームを孤立させた上全エースで波状攻撃だ)

「オジキ・タマトッタンデー・ライジング・ザ・ビースト」
(この戦術(タクティクス)の参考になるかと思い、映像を用意しました。ご覧ください。)



ミスターWから画面は映画のダイジェスト版に切り替わった。
「War Without a Code (邦題:仁義なき戦い)」だった。


映像を見て明らかに眼が座ったのはガーミンの面々とイェンス・フォイクトだった。

ミラーとヘシュダルは意味もなく肩をいからせて闊歩し、イェンスとデコをぶつけながら睨み合った。
アンディはその中央で泣いていた。


「ストリベリー・フィールズ・フォーエバー」
(では、成功を祈るぞ諸君。)

「カミン・アイム・カミン・ギミギミ」
(禿山には私からも手の者を刺客として向かわせる。)
(刺客のコードネームは(黄金の猪)。狂犬と呼ばれた男だ)

映像は途絶えた。

翌日、眼が座ったガーミン谷の仲間たちは「おやっさん!命取ったんでぇ~!」と叫びながら捨て身の波状攻撃を開始。
(アタックの合図はチームカーからの大音量の「仁義なき戦いのテーマ」だった)

一人、また一人とSKYのアシストを倒し、そしてガーミンの鉄砲玉達も倒れていった。
そして、ついにガーミンはSKYの鉄砲玉を掃討し、フルームを孤立させる事に成功。

「往生しぃやーーーー」とJV監督は叫んだが、捨て身の攻撃でガーミン谷のメンバーはすでに残っていなかった。
そして、ガーミン谷メンバーの恐ろしい形相とテーマ音楽に引いてしまった他のチームは、肝心のフルームよりも、鏡・文太、ヘシュダル・弘樹を恐れ、肝心のフルームに致命的なダメージを与える事は出来なかった。


そして全てのチームは一週間後の禿山でついにミスターWの刺客を見た。

文字通り黄金の猪を抱いたおじさんであった。





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「だっる…」

遠く離れた英國で、ミスターWはビールによって濁った眼で、ユーロスポーツが映っているテレビのスイッチを切った。




こうしてカンチェ・ノアールの伝説はまた作られていく。


(終わり) 

2013年8月3日土曜日

vol.2 石畳はオレの生き様

カンチェさん:「さぁ、アンディ!石畳こそ漢の証。今こそ独り立ちの練習として、オレとヴェロドームまで行くのだ。」


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アンディ:「カッ、カンチェさん、ガタガタ道でボトルが飛んだよ!」

カンチェさん:「まってろアンディ! おい!オマエ!」

サガン:「オっ、オレっすか?」

カンチェさん:「アンディのボトルが飛んだ。オマエのボトルをよこせ。」(爽やかに花を背負って微笑みながら)

サガン:「えっっっ!今から勝負所っすよ!」

カンチェさん:「ご苦労だった!オマエの犠牲は無駄には無駄にはしないぞ!さぁ、アンディ、お礼を言え!」

アンディ:「ありがとう!」

サガン:(遠ざかりながら)「自発的じゃないっすからーーーーーーー」



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こうして石畳に、また一つ伝説は作られた。

vol.1 ヴェロドームはオレのゆりかご

パリ・ルーベは佳境を迎えていた。

ファンアフェルマート:「ちょっ!カンチェさん動けないし!」

スティバル:「まじかよ!おれら大金星じゃん!やっちゃおうぜ!」

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RSTチームカーに寄り添うカンチェさん。


監督:「どうした?! なにかトラブルか?」

カンチェさん:「なぁ、。。。。ルカ、教えて欲しいんだが。。宇宙の大きさは、ヴェロドームの何倍ぐらいだ?」
監督:「???」
   「あー!オマエ、昨晩早く寝ろといったのに「宇宙のひみつ」読んだろ!。誰だ、文字の多い本をファビアンに渡した奴ぁ!」
カンチェさん:「なぁ、無限とはなんだ?果てがないのはどういう事だ?。。。眠れないし、走っていても心ここにあらずだ。」

メカニック;(監督…プランBでいきましょう)

監督:(目でうなづきながら)いいかファビアンよく聞け。宇宙の大きさは、ちょうどヴェロドームの100倍だ。」
カンチェさん:「なんと!それほどまでに宇宙が広大とは! だが、いかに宇宙が広大とはいえ、目に見えるものとの比較が可能であるとすれば、このカンチェ、走破できないはずはない! 心配かけたなっ!」 ギャンっ!!(加速)

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ファンアフェルマート:「なんだよ!今横を通って行ったノロイみたいな黒い影!」

スティバル:「あっー!カンチェさんだ!なんだよ!お人好しが唯一のポイントだったのに、三味線野郎になったのかよ!」
ファンアフェルマート:「目が三角形になってるぜ! つき位置も無理だぁ! なんとか廻して追うぞ」

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カルフール前で逃げに追いつくカンチェさん


ファンマルケ:「カっカンチェさん! あんたはもう死んだって無線で!!」

ファンデンベルフ:「そんな!おいら婚約したばかりなのに。。。。」

カンチェさん:「お前ら。今日のオレはもう足がいっぱいだ。。残念ながらお前たち若人に道を譲る時がきたようだ。

だが、落ちぶれたりとはいえこのカンチェ、大チャンピオンがずるずる遅れてリタイヤなんて真似はできん。
最後の力を振り絞ってお前たちを追走したが、もうここまでのようだ。
すでに勝負する力もない。オレはこのまま後方で休ませてもらう。おもいっきり戦うが良い。
未来はお前たちの手に。。。ぐぁはぁ(ケチャプで吐血の真似)」


そこへ、死にそうな顔になって追いついてきたスティバルとファンアフェルマート。


スティバル:「おーい!騙されるなーーーー!!そ・い・つ_は・三味線(ぐyぅっぼおうxgほxtゆ!!!)」

へし折れたマシンごと、畑に消えていくスティバル。

カンチェさん:「カンチェ秘奥義:オービダー・フライバイ (自転車上での回し蹴り)」


ファンマルケ:「スティバルっ!スティバル!!!! カンチェさん、あんた何をしたんだ!」


カンチェさん:「この時期のフランドルは空気がまろやかだと思わんか。。みろ、ひばりが泣いている。(カンチェ究極奥義:コミュニケーション・ブレイクダウン(聞こえないふり))




こうして石畳に、また一つ伝説は記録された。