2015年5月28日木曜日

[超訳] フィル・ガイモンのカリフォルニア グルメ紀行 vol.2

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・2度目の朝食 8:30 a.m.

私は意識の高い仕草でさらに2枚のフレンチトーストをつかむと、それをピーナツバターにつけて貴族的に食した。


・レース前 10:30 a.m. 

レース前にクッキーを一枚食するのは貴族の嗜み。コカコーラも飲んだが写真にはあえて撮らなかった。諸君のような庶民でもコカコーラのなんたるかぐらいは知っているであろう?


・レース中 11:30-4 p.m

このステージはとても距離が長く時間がかかった。なのでなるべくたくさん食べる必要があった。レース中はさすがに執事に頼るわけにもいかず、どれだけ食べたのかは正確には覚えていない。だいたいこんな感じだと思う。

(1)Ⅰ時間目 
・Clif bar X 1
・Cif Z-Bar X 1
(2)2時間目    
・Clif bar X 1
・Clif Block X 1
(3)3時間目
・Clif Block X 1
・Clif ジェル X3

※我がオプタムはClif barのスポンサードを受けている。君達庶民は貴族の私がレース中に何をどれだけ食べたかなど興味がないかもしれないが、貴族には貴族の「大人の事情」というものがあるのだ。

(4)4時間目
・スニッカーズ X 2 (サイズは「みけねこさん」から「まんぞくさん」までのどんなサイズでも良い。ようするにスニッカーズのサイズで重要なのは「腹持ちする」事だ。)
・Clif ジェル(カフェイン入り) X1


・ドリンク類
・真水 X 4ボトル
・Clif パウダー(訳注:ポカリスエットのパウダーのようなもの)入り水 X 4ボトル


・レース後
・チームのマッサーが水とリカバリージェルを手渡してくれた。


・4:30 p.m 

ホテルへ向かうバスの中でも食べるのが貴族の嗜み。このタイミングでよく食べるのが米にベイクした野菜と卵をのせたものだ。


・シャワーとマッサージが終わりお待ちかねの貴族の晩餐タイム!

キャーミンの選手達は今ごろ城の外でカップラーメンをすすっているだろうが、伯爵である私は優雅に晩餐の席についている。
サラダと大量のポモドーロソースのパスタを食べた。とりたててこの伯爵の目にとまるものでもなかったのであえて写真は残していない。(ジョドー、あのシェフは後で地下牢へ落とせ。)

キャーミンの晩餐のシメはラーメンだが、貴族である私の晩餐のシメはもちろんクッキーである。クッキーの芳香を舌に絡ませながらふと思うのであるが、下々の者どもは何故私を「クッキー野郎」「チョコチップ・フィル」といつもなれなれしく呼ぶのであろうか? ノブレス・オブリージュ(貴族の義務)も知らぬ愚民共よ。そして私は思い出すのだ。ネット弁慶として調子にノって自分でクッキーキャラを作り上げてきたことに。問題なかろう。クッキーはただ美味であり、我が舌の永遠の愛人である。一人のファンは上等なクッキーの特大サイズボックスをプレゼントしてくれた。私は晩餐の席にいた他のチームの庶民共に分け与えた。



その晩、全てのチームは同じホテルで宿泊したのだが、ジェス・アンソニーは晩餐の席に遅れてやってきた。そして私が食後のクッキ-を楽しんでいる時、彼は晩餐の最初の一皿を食べながら私に聞いてきた。

「よぉ伯爵。お前、朝食の時にアボガド食べてたよな?どうやって手に入れたんだ?オレもサラダに欲しいぜ。」

ザーベルと私は口裏を合わせて優雅に答えた。

「アボガド?それはいったいなんの話だね?ミスタ・アンソニー。」





Fin.





2015年5月27日水曜日

[超訳] フィル・ガイモンのカリフォルニア グルメ紀行 vol.1

日本のファンからカリオストロ伯爵に似ていますね、とメールをもらい地味に落ち込んでいる20代のガイモン伯爵である。

ロード選手は毎日3,000〜6,000キロカロリーをバイク・ライディングで消費する。それに耐える為には大量に、そして適切に食べなければいけない。まぁ、まずは量を食べる事が大切だ。君達民草に我々ロード選手のフードライフの片鱗を紹介するために、私ことフィル・ガイモン伯爵がツアー・オフ・カリフォルニアのバッカス・ライフを紹介しよう。


朝食:8:00 a.m.




・フレンチトーストが二切れ

我がチームはメープルシロップがご禁制である。そして他のチームに頼んだところで京都人のようにいけずな彼らが分けてくれるはずもない。(テッド・キングはその時残念ながらいなかった。早撃ちテッドの二つ名を持つ彼は常にガンベルトのホルスターにメイプル・シロップを偲ばせているのだ。彼はバイクの上でもベッドの上でも名うての早撃ちだ)

・アメリカスタイルのトーストが二切れ

大切に共用トースターで育てていた最初の二切れは他の選手にパクられてしまった。(サンノゼ警察からはまだその後の捜査の進捗について連絡がない。しかしトースターから指紋は採取され、現在DNA検査の結果待ちだ。)間の悪い事にトレックのリカルド・ゾイドルが私のパンが盗まれたトースターでパンを焼いた。よって、この写真に写っているパンは彼の焼いていたパンであり、これではまるで私がドロボウである。(信じて欲しい。湖の水は飲めないし空も飛べないが。)後になって気が付いたのだが、私が焼いていたパンは全粒粉のパンだ。今私の口と逢瀬の真っ最中のこのパンは普通の白パンである。どうりでリカルドが先ほどからこちらをチラチラ疑惑の目で見ているわけだ...。ドロボウは私の心ではなくパンをとっていった。これではまるで私がドロボウである。リカルドに全てを説明しようと思った時には時既に遅しだった。リカルドがこの記事を読む事があればこの場で謝罪したい。

盗んだバイクで走り出したい気持ちを抑えながら、私は盗んだパンにスクランブルエッグをトッピングした。(もしかすると本物の卵じゃなくて、粉末の合成品かも) ビュッフェでアボガドが見つからなかったので私は心の中でバイロン的な毒舌を吐きながらウェイトレスにアボガドをお願いした。彼女は私をまるで初夏に雨に濡れた後に三日間床に放置された安物のソックスを見るような目で私を見た。しかしシェフはちゃんと綺麗にカットされて皿に丁寧に並べられたアボガドを持ってきてくれた。忙しいだろうからまるっと持ってきて私に切らせたとしても不思議ではなかった。彼は戦場のようなホテルの朝食ビュッフェのホテルシェフとして期待以上の良い仕事をしてくれた。

私がテーブルに座って貴族的仕草でアボガドにナイフを入れようとしたとき、チームメイトのトム・ザーベルが私のアボガドに目を留めた。

「なんだよぉ、伯爵ぅ。そのアボガドどこで手に入れたんだよぉ」

庶民とはかくも僻みっぽいものである。今や彼の脳細胞の87.5%はアボガドに占領されていた。

ため息まじりに私がトムに説明すると、彼もウェイトレスにアボガドを頼んだ。今回もシェフは快くアボガドを提供してくれた。しかし私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。トムと私はシェフにアボガドの秘密は墓まで持っていくと誓った。もしもこのレストランが好きなだけアボガドを出してくれると分かったら、欲望に目をぎらつかせたケダモノ・サイクリスト達がホテル中のアボガドを要求し、後世の歴史家は「ガイモン平八郎のアボガドの乱」「ア・ボーガド・ロリコン伯爵」という烙印を私に押す事だろう。それだけは避けねばならない。死人とトムに口なしだ。

飲んだもの:スイートティー(カフェインを抜いていないもの) ホテルの部屋で一晩点てておいた。


(続く)