2016年11月3日木曜日

フィル・ガイモンのエピローグ

フィル・ガイモンの自伝「日給10ドルのプロ」のエピローグはこの文章で始まる。



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ぼくのバイクレース人生を振り返ると、まさに「生き馬の目を抜く」って感じ。

レース漬けの日々、僕は呪ったもんだ。自分の呪われた仕事を、退屈なスーツケースの旅ガラス生活を、そして毎日の耐えがたい貧乏生活を。

ぼくはなんどもこんな生活やめたいと思った。プロ・サイクリストとしての生活はリア充には程遠いから。でもこんな辛い生活なんだけど、やっぱりほんの少しの素晴らしい部分がいやな事を吹き飛ばしてくれた。

どんな事でも仕事となるとキツく、どないせぇっちゅうねんって時もあった。僕らはそれぞれの仕事を愛し、夢破れ、そして誰もが限界に突き当たる。

ぼくはヨーロッパで成功するんだろうか?いまでも分からない。だいたい「成功」ってどういう意味なんだろう?

でもこの坂は登らないといけないんだ。成功したいからじゃない。ただ知りたいんだ。ぼくにこの坂が登れるかどうかを。

レースにはクラッシュも、痛みも待ち受けている。何回も思う。DNFしたら楽だろうなって。でもぼくは知ってる。ぼくはそれでも登り続けるんだって。だってぼくには見えるんだもの。格好良くガッツポーズをしてゴールする自分の姿が。バカだと思われるだろうけど、僕はツールで優勝する自分すら思い描く事ができる。もちろんわかっている。すべてのプロがリタイアするその時まで、こんな馬鹿げた夢を見続けているんだってね。

もしかするとこれは僕の運命かもしれない。永遠にバカを繰り返す魔法をかけられた自転車乗りとしての運命。



-フィル・ガイモン





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人生におそらく意味というものはない。
だけど時々思う。
賢さよりも愚かさが生きる力になるのではないかと。