2016年4月14日木曜日

[台本] 麗しのダイアナ:ワンダーウーマンの憂鬱

(2016年4月12日メトロポリス)

[バットマン]:
アルフレッド!カイジュウにはクラークの熱線も通用しないぞ!物理攻撃で押すしかない。ワンダーウーマンに支援を要請しろ!

[アルフレッド]:
ブルース様、残念ながらダイアナお嬢様は本日、初出勤の日でございます。

[バットマン]:
はぁ?ちょっと待て。地球を守るのが我々ジャスティス・リーグの仕事だろう?

[アルフレッド]:
お嬢様は自分探しをしてみたいと。

[バットマン]:
うわっ!さぶいぼ!ウチの新人でもその台詞を吐いて帰ってきた奴はおらんわ。

[アルフレッド]:
お嬢様に相相応しい仕事をと、わたくしウェイン・エンタープライズのCFOのポストを打診したのですが...

[バットマン]:
CEOの私を差しおいてかね?

[アルフレッド]:
ブルース様はこのところのジャスティス・リーグの激務で本業が疎かにおなりでしたので僭越ながらこのアルフレッドがグループ全体を取り仕切らせていただいておりまして、本年Q1なぞ昨年に比べて5%の増収増益という事で、株主の皆様からもいっそこの爺めが経営の手綱をとってはどうかと...

[バットマン]:
さらっと下克上宣言かね?お前、昔から思っていたけど腹の中はコウモリ並みに黒いな..

[アルフレッド]:
ダークナイトの忠実な下僕でありますれば。

[バットマン]:
年寄りはなんでもうまい事まとめようとしやがる...。で、ダイアナはどこで働いているんだ?

[アルフレッド]:
守るべき下々の者の生活を垣間見たいと人材派遣会社パホナ経由で、日本の「海山商事」という小規模な商社でお勤めでございます。

[バットマン]:
しょうがないな。とにかく、定時きっかりに会社にバットウィングで乗り付けて引っ張ってこい!いいな!

[アルフレッド]:
ブルース様?

[バットマン]:
なんだ?

[アルフレッド]:
レディーに対していつもそのような態度を取られるから、そのお年で独り身なのでございますよ。

[バットマン]:
うるさいわっ!バッタラン喰らわしたろか!

[アルフレッド]:
それに引き替えクラーク様のそつのないジェントルマンぶり。ロイス様が何度高層ビルから突き落とされても仕事そっちのけで飛び出しお姫様だっこではないですか。

[バットマン]:
丸投げされるこっちの身にもなってみろ!

[アルフレッド]:
家柄も容姿も仕事ぶりも申し分なく、ご婦人方が放っておくはずはないのに一人としてステディーな関係を長く維持出来ず、社交界では「怪しい」「地雷物件?」「まさかブルXアル?」と薄い本まで出る始末。いったいこの先、この爺はブルース様のお子様をこの手にかいいだく事が...」


(バットマンにより通信は強制遮断された)



(同日同時刻 ゴッサムシティ 海山商事)


[穴子課長]:
では、ミス・プリンス..

[ワンダーウーマン]:
どうぞダイアナと呼んでください、アナゴ課長(全開の作り笑いで)


[穴子課長]:
ではダイアナ、これまで実務経験はないんだね?

[ワンダーウーマン]:
ございません。

[穴子課長]:
その年で実務経験がないのはいろいろ不安ではないかね?

[ワンダーウーマン]:
(ビキっ)
必要な学位は持っておりますし、父の学び舎で森羅万象を学びましたので、ご期待には十分に答えられるかと。

[穴子課長]:
お父上は何を?

[ワンダーウーマン]:
全能神ゼウスとしてオリュンポスの学び舎を統括しておりますの。

[穴子課長]:
.........(こいつ、地雷の匂いが...)そうかね。
ところで、まず君に頼みたいのはこの月次エクセル検収リストのアンマッチチェックだ。こちらのシートに必要な条件が書いてあるので、しっかりと目でチェックして入念に...

[ワンダーウーマン]:
終わりました。

[穴子課長]:
ってもう!馬鹿をいっちゃ困るよ。この私でさえクロスチェックしながら三日はかかる作業だよ?そんな雑な事で仕事が勤まる甘い会社だと思ってもらっては

[ワンダーウーマン]:
このシート内にノイズデータが多いうえにいい加減な論理条件式でさらに醜くなっていたので、テキストにエクスポートした上でシートの第一条件から正規表現を導いてフィルタした結果をピボッドに喰わせただけです。何故これに三日もかかるのか不思議ですわね?


[穴子課長]:
なに言ってんの!仕事はね!心を込めて手作業でやるものなの!コンピューターで楽しちゃだめでしょう!!!!

[ワンダーウーマン]:
(ビキっ)
(ビキっ)
(ビキっ)
(ビキっ)
(ビキっ)
(ビキっ)
(ビキっ)

あン?

(とどろくワンダーウーマンのテーマ)







(同日17:02 ゴッサムシティ 海山商事(だった場所) )

(ワンダーウーマンに接近するバットウィング)

[アルフレッド]:
ダイアナお嬢様、ブルース様のご依頼でお迎えにあがりました。初出勤はいかがでございました?とうかがいたい所でございますが......海山商事のビルが消滅しているのは何故でございましょう.....?

[ワンダーウーマン]:
アルフレッド?

[アルフレッド]:
はい、お嬢様。

[ワンダーウーマン]:
おまえ、ブルースの赤ちゃんをその手に抱くまでは長生きしたいと言っていたわね?

[アルフレッド]:
それはもう!ただそれだけを楽しみにこの老骨に鞭打ってバットスーツだのやバットモービルだのというガジェット開発に身をやつしている次第でして。

[ワンダーウーマン]:
長生きの秘訣はね、アルフレッド........
沈黙よ。
どうしたの?顔色が悪いようだけど?

[アルフレッド]:
少し持病の癪が.....。それでは緊急発進いたします。シートベルトをおしめください。

[ワンダーウーマン]:
(ネイルを塗り直しながら)
状況報告。

[アルフレッド]:
メトロポリスに出現したクリプトンカイジュウは2対でございます。コードネーム、レザーバック、オオタチ。いずれもカテゴリー4。現在クラーク様とブルース様が応戦しておりますが、クラーク様の熱線もブルース様のADAFSも効果がありません。つまり...

[ワンダーウーマン]:
(ネイルに息をふきかけながら)
有効な対抗オプションは、物理的接近による一点突破の物理的殲滅...。ボーイズが私に泣きついてくるわけね。

[アルフレッド]:
ご足労をおかけいたします。

[ワンダーウーマン]:
アルフレッド?

[アルフレッド]:
はい、ダイアナお嬢様。

[ワンダーウーマン]:
明日の22:30に、パポナに面接の予定をいれておいてもらえるかしら?

[アルフレッド]:
承知いたしました。

[ワンダーウーマン]:
ちょうど良かった....。スカッとしたかった所なのよねぇ....。
アルフレッド、こっち見ない。

[アルフレッド]:
失礼しました。

[ワンダーウーマン]:
(カイジュウが気の毒)って顔に書いてあるわよ。






(40分後 メトロポリス 聖母子教会の鐘楼の上で)

[バットマン]:
(双眼鏡を覗きながら)
きょうの姐さん、荒れてんなぁ.......

[スーパーマン]:
到着するなり「ボーイズは教会の上で盗撮でもしてなさい」だもなぁ...

[バットマン]:
こりぁ、男がらみだろ?振られたな!

[スーパーマン]:
君はゲスな勘ぐりしか出来ないのか?わざわざ原子に分解されたい人間の男がいるわけなかろう?

[バットマン]:
だからお前は万年チェリーのスーパーマンって言わるんだよ。たまにはロイス以外の女も見てみろってんだ。

[スーパーマン]:
貴様!ロイスを愚弄するか!(目が熱線発光)

[アルフレッド]:(の声)
相変わらず仲むつまじい事ですな...

[バットマン]:
うわっ!いきなりバットドローンであらわれるんじゃない!アルフレッド!
ご丁寧にモニタに自分の顔を写しやがって。

[アルフレッド]:
これがリモート・プレゼンスでございますよ、ブルース様。
ご要望のフィルズ・コーヒーのミント・モカをお持ちしました。

[スーパーマン]:
やぁ、アルフレッド、いつもすまないね。

[バットマン]:
どっちがオレの好きなヘイゼルナッツ入りだ?

[アルフレッド]:
クラーク様、いつもお優しいお言葉ありがとうございます。ロイス様もお変わりなく?

[スーパーマン]:
あぁ。二人とも仲良くつつましく暮らしている。最近はアパートメントでゴムの木を育てはじめてね。二人一緒に霧吹きで水を拭きかけてレオンごっこを楽しんでいるよ。ささやかな幸せって奴だね。

[バットマン]:
アルフレッド!デカフェはよせって言ったろ?

[アルフレッド]:
嘆かわしい!(さめざめ)このようなカイジュウとの大決戦の最中でも恋人とのささいな日常に頬を赤らめるクラーク様。これぞ理想の恋人、理想の夫像でございますよ!それに引き替え、フィルズの紙袋をあさってカップのふちから匂いをかぐブルース様の嘆かわしい姿といったら...

[バットマン]:
クリプトン星人はきっと顔面の毛細血管が発達しているのさ。

[アルフレッド]:
それはそうと、ダイアナ様の戦況は如何でございましょう?

[バットマン]:
どうもこうも、あれは戦いってより虐殺だな。シーシェパードかギレルモが抗議してくるんじゃないか?
うわっ、エグいな....。ゼロ距離でダムド・ストローク3連発かよ...

[スーパーマン]:
メトロポリタン・ドームが消滅したぞ........

[バットマン]:
オオタチの方が顔を硬直させて後ずさっていく.....あっ、姐さんが睨んで目力で止めた....

[スーパーマン]:
姐さん、舌なめずりしながら近寄っていく....。

[バットマン]:
R18だろ、この映像...

[スーパーマン]:
まずいぞ....姐さんのあのポーズ.....

[二人]
マキスマム・バスター・タイフォン!!!!!!! こんな地表で!!!!

[スーパーマン]:
姐さん!地軸が歪みます!電磁波で姐さんの好きなNetflixも見られなくなりますよ!

[バットマン]:
いや、人類滅亡の危機だぞ!
あっ、オオタチの奴、泣きながらこっちに逃げてきやがる!

[スーパーマン]:
姐さん、まって!こっちには僕達が!

[バットマン]:
こっち来んな!



VooooooooooGhhhhhhhhhhhhhoooooooooooo



[スーパーマン]:
あっぶねぇ!マント燃えたしっ!

[バットマン]:
耳取れたしっ!

[スーパーマン]:
君、耳がないとまるで新宿SMクラブのM男だな。

[バットマン]:
お前こそ、マントなければマドレーヌ峠のマンキーニじゃねぇか!

[二人]
なんだとっ!

[アルフレッド]:
お二人とも、戦い終わったダイアナお嬢様のあの笑顔をご覧なさい。なんと気高く美しく、充実した表情でございましょう。まさに戦いの美神。

[バットマン]:
(いや、おれには新人を喰っちまった肉食のお局に見えるんだが...)

[アルフレッド]:
ブルース様、メトロポリタン市議会議長が今回の損害賠償の件でバットマンの中の人と話し合いたいと。

[バットマン]:
言ってやれ、「中の人なぞいない」。

[スーパーマン]:
もしもしロイス、今文字通り飛んで帰るから。




(Fin)