2016年3月22日火曜日

[超ラノベ訳] デイビッド・ミラーの「オレのドリーム・チームがこんなにイケてるはずがない」 part1

Cyclingnewsの新しい試みとして、ロード界の有名人に「オレが考える理想のチーム」をピックアップしてもらう事になった。今週は引退した英国人サイクリスト。デイビッド・ミラーにご登場願おう。彼のキャリアは18年前のコフィディスに始まり、途中、ドーピングで2004年から2006年までバンされ、その後、ガーミン・スリップストリームの設立に携わっている。

ドリームチームのメンバー選出のルール。


以下のルールに従うこと。


  • ドリーム・チームは9人のライダーが必要である。選出者は自選が可能である。その場合、選択可能なライダーは8人となる。


(愚問だなっ!もちろんオレがガーミンだ!)


  • 選択するライダーは、必ず選出者が一緒に走った事のあるライダーでなければならない。つまり歴史上のレジェンドを集めて「オレの考えた最強チーム」を作る事は出来ない。


(考えるまでもねぇ。オレ達世代が人類最強に決まってんだろ!あぁん?お友達内閣言うな!)





チーム名:DM9(偉大なるデイビッド・ミラー様と8人の蘭丸共)





Road captain: David Millar (Garmin)
キャプテン:デイビッド・ミラー(永遠のガーミン)

DMレッド

<Pro Cycling Trumpsによる能力パラメータ一覧>

[GTステージ勝利数]        10
[TT力]                                 90
[ワンデー力]                     32
[登坂力]                           44
[スプリント力]                 48
[総合力]                           60

[自己顕示欲]                    ∞
[好きな映画]                   ナインハーフ
[召還方法]                       ランスと自分の間にはさんだVDVを生け贄に召喚



このドリームチームでの俺様の役割は言うまでなくこいつだ。オレはキャリアの最後までロード・キャプテンだった。オレがやっていた時のロード・キャプテンは、まぁなんでも屋さ。目を配り、アシストに徹し、機会があれば勝つ事も出来る奴(くぅ〜、渋いねぇ)。まぁ、アーガイルジャージを着たオレのキャプテン姿はまさに「オレンジ菱形の憎い奴」って艶姿だったぜ。オレにうってつけの役割だったし、この仕事からたくさん学んだ事もある。

駆け出しの頃、オレはリーダーって役割に向いているなんて思わなかったし、それを期待するような酔狂な奴もいなかった。若けぇ時のオレはばくち打ちみたいなものさ。当たればでけぇが次の日はすかんぴんだ。 (ザブ:ザワザワ.....)
でも、そんなオレでも他の奴らの面倒を兄貴として見る必要があったり、チームから大事な役割を任されたりして、だんだんと安定して一人前になった。チームからはじめてリーダーを任された時、オレはリーダーに必要な素養って奴を分かってなかった。でもな、チームからリーダーをやれって言われて見よう見まねでリーダーのまねごとをしていると、その時だけはオレなんかでも真っ当な人間でいられたのさ。だからもしあんたが某チームの某GMだったとして、「あたいが悪かったわデイビッド!今までの事は水に流してエースとしてキャー(P)ンに残ってくれない?」って言われた所で、正直エースなて仕事には興味はねぇのさ。

 某GM:「ちょっとぉ、いいかげん、しつこくない?」

んなわけでオレ様のリーダーとしての黄金時代は2009年から、そうさな2013年の間だな。身も心も入れ込んでキャプテンの役割に没頭していた。手抜きレースなんざ1つだってない。いつも全開だった。まぁ、いろいろあったオレが一番イケてたのがそん時って事だ。オレはその年月を楽しんでた。オレは「必要とされていた」し、ただレースの為だけにそこにいるお客様ライダーじぁなかった。あの時、オレには「そこにいる理由」があったのさ。



Sprinter: Mark Cavendish (Great Britain)
スプリンター:マーク・カベンディッシュ(大英帝国)


DMイエロー
マン島の暴走肉弾頭
離島のマイルド・ヤンキー
大英帝国のエグザイル・マーク

<Pro Cycling Trumpsによる能力パラメータ一覧>

[GTステージ勝利数]                 44
[TT力]                                       39
[ワンデー力]                             72
[登坂力]                                    27
[スプリント力]                          99
[総合力]                                    45

[地元愛]                                    ∞
[好きな映画]                             ひとまねこざる
[召還方法]                                 ミス・イタリアを生け贄に召喚


最初にカブに会ったのはオレがおイタをして出走停止処分を喰らっていた時だ。オレはイタリアでトレーニングしていてマキシミリアン・シャンドリと一緒に滞在していた。その時、カブはアマで飛ぶ鳥を落とす勢いで勝っていた。奴はイタリアでシーズンを終えたんだが、はじめて会った時、このマン島のぽっちゃり王子はオレ様にこう言ってのけた。

「ファッ(P)ずらよ!オラがゴール地点に現れたならば、なんびとたりともオラを負かす事なんでできねぇ相談ずら!おわを負かすなんてありえねぇすらよ!ふひょひょおおおおおお!夜露死苦!!!」

奴と一緒にトレーニングした時の事を覚えている。その日、オレ達は登りトレーニングで延々と丘を登っていた。カブはどんな場所でもどんなペースでも汗まみれでぜぇぜぇだった。そんな時でもこの悪ガキの口は止まらねぇ。

「どんな奴でもぶち負かすだよっ!そいつがベストのペースであっても指先でちょちょいのちょいずらよ!」

その時オレは思ったさ。「この口先だけの厨二病のガキめ」ってな。でも、このぽっちゃり王子のはったりは現実になったのさ。

皆は奴が今スランプだと思っているがカブはいつも自分の力を完全に信じている。そしてオレ達は目の前の奴のスランプに目を奪われて、どれだけ長い間、奴が最強スプリンターの座に君臨してきたかを忘れているんだ。奴はツールで26勝利を上げていて、そして今でもなお、確実に勝てる最強レベルのスプリンターの一人さ。世間ではマルセル・キッテルをカブの後継者と思っているようだが、カブの力はこんなもんじゃねぇ。


奴の華麗な戦績にオレ達は慣れちまっているから、どうしても世間はカブが調子悪いと厳しめになるがな。でもこのマン島の肉弾頭はそんな事なんか気にしねぇだろうし、相変わらず奴のレースとチームに向ける愛はホンモノだ。

オレとカブは同じプロチームで走った事はない。だけどオレ達は何度も何度も英国ナショナルチームとして一緒に戦ってきた。そしてもちろんコモン・ウェルス(英連邦王国杯)でもな。当然、由緒正しいスコットランド生まれ香港育ちのお坊ちゃまであるオレと、マン島で風邪の時には草でも食べとけと育てられたワイルドさが魅力のカブではお品が違うんだが、それでもオレ達はよくツルんでいた。そうだ、オレは本当の奴がどんなだかよく知ってる。努力が空回りして、チームがうまく機能していたい時でさえ、奴の存在は魔除けや安産祈願のお守りみたいなもんだ。いるだけでほかの奴にエネルギーをふりまく種馬だな。

よくあるリーダーのタイプは、俗に言う「ムードメーカー」って奴だ。でもって、全てのチームはこの手のリーダーにとってピンチになる。ムードメーカーのリーダーがご機嫌ならチームも上々、そうでないならチームはダメダメになっちまう。カブがチームにいると、チームが上げ潮な時も引き潮な時も、奴はギラギラと感情を隠さないで獣のオーラをまき散らしている。奴はたくさんの勝ち星を挙げているし、勝ち方って奴を何通りも知っている。奴は金ぴかの自利主義者で、チームメンバーをねぎらうのに気前よく腕時計を買ってやるというクラシカルな方法を使っていたもんだ。でも、奴の江戸っ子的気前の良さは、スプリントでガンガンと勝ち星をチームにくれてやる所だな。まさに漢って奴よ。奴の怒りと気風の良さはチームへの飴と鞭ってとこだな。だから、奴が感情を剥き出しにしてレース後の種馬みてぇにブヒブヒ息巻いていたとしても、そいつはとても短い間だけの話さ。皆が思っているよりな。

奴のそんな側面を知っている奴は少ない。でもロンドン・オリンピックでオレ達イギリスチームが大ちょんぼをやらかして奴にメダルを取らせる事が出来なかった時、レース後の奴はまるでブッダのように寛大だったさ。オレ達はその日、いろんなレベルでやらかしちまったってた。オレ達は1年前の世界選手権の成功で天狗のクソ野郎になっていたんだ。その時のオレ達イギリスチームはイケイケの痛い厨二軍団で舞い上がって高原状態、そしてもしかしたらロンドンのコースはカブにはキツかったのかもしれなかったが、もうその時のオレ達は「ワンパンのカブさんならやってくれるだろ」「カブさんぱねぇすっ!」って感じて奴に頼り切っていたのさ。もちろん、旗印になるスター選手は必要だし、実際にその実力はあった。しかし若干考えなしだったオレ達イギリス・ヤンキー軍団がちょっとヤンチャにブイブイ言わせていたもんだから、他の国の奴らは自分達の勝ち負けをまずそっちのけにして、オレ達イギリスチームを潰しにきやがった。

まぁ、ダラレバ話になっちまうけど、レースがヒートアップしていた時にオレの無線が昇天しちまった事を差し引いても、オレに何か出来たわけでもないけどなぁ。英国チームのゴールデンエージさ。ウィゴがマイヨジョーヌ、カブがアルカンシエル、所属チームの4つがツールでステージ優勝。英国チームがこれだけ強力な布陣を組んだことは歴史上なかった。舞い上がっちまったオレ達はオリンピックで空中崩壊ってわけだ。オレ達は天狗になりすぎていて、カブっていう神輿を担いでさえいれば余裕で勝てると簡単に考えすぎていたのかもしれない。神輿に縛られすぎたチームは頭を潰されると簡単に死んじまう。まぁ、そういう事だ。




おっと、次はクリスチャンだとワクテカだったそこの君。いやぁ残念。誌面が尽きた。また来週!!




Author: David Millar


(続く)




オリジナル: