2014年12月19日金曜日

JVのクリスマス・キャロル

まったくいやになっちゃうわよね。
この時期、街はリア充ばかりじゃないの?
わたし?わたしはまぁ、南の島でカワユス達といちゃいちゃしていられるから比較的リアって言えるんじゃないかしら?

私もこの年になるとクリスマスって柄でもないんだけど、もし今、サンタさんに何かプレゼントもらえるなら何がいいのかって考えてみたりしたわ。

カワユス?(もう足りてる)
勝利?(うーん、結局足りなかったわね)
スポンサー?(生々しい話だけど、これ(指でポーズ)も大切よ)

この仕事していて、いろいろ厳しい事も言わなきゃいけない事もあったし、ほら?この世界、理想だけじゃないでしょ?
綺麗事ばかりいっていたって、この世界、ちっともクリーンになんかなりゃしない。

なんっつぅか、もう全てを投げ出しちゃおうといろいろ思った事も何回かあったわ。

でもねぇ、7年いろいろ続けていて、結局分かった事もあるのよ。



There's nothing you can do that can't be done.
Nothing you can sing that can't be sung.
自分に出来る事は自分がやれる事だけ。
唄えない歌を唄おうなんて所詮は無理な話よ。

Nothing you can say but you can learn how to play the game
It's easy.
言葉よりこの世界の仕組みを学びましょう
簡単な事よ!


There's nothing you can make that can't be made.
No one you can save that can't be saved.
あなたが作れるものは、あなたが作る事が出来るものだけ
あなたが救える人はあなたに救える人だけよ。

Nothing you can do but you can learn how to be you in time ?
It's easy.
何も出来ないって悩むよりも、あなたらしくなれる方法を考えましょうよ。
とっても簡単な事よ!



All you need is love, all you need is love,
All you need is love, love, love is all you need.
結局は愛なのよ(シモじゃなくて)愛よ愛!
今になって分かったの。迷った時には愛さえあればいいって。



There's nothing you can know that isn't known.
Nothing you can see that isn't shown.
分からない事を知ろうとあがいたって無理な話じゃない?
あなたが見ているものが全てだもの。

Nowhere you can be that isn't where you're meant to be.
It's easy.
あなたにはあなたの世界があるの。あなたはそこにしかいられない。



All you need is love, all you need is love,
All you need is love, love, love is all you need.
結局は愛なのよ(お前が言うなって言われたって)愛よ愛!
今になって分かったの。迷った時には愛さえあればいいって。


All you need is love (all together now)
結局、愛じゃないかしら?(そうよね?)
All you need is love (everybody)
そうよね、愛よね?(思うでしょ?)








All you need is love, love, love is all you need.
今になって分かったの。迷った時には愛さえあればいいって。








-All you need is love/Beatles











Merry Christmas.

2014年12月12日金曜日

[翻訳] Letters of Note :若い自分への手紙 <マンディー・ジョーンズの場合> Rouleur ISSUE 50

  マンディ・ビショップ(旧姓ジョーンズ)は1982年にグッドウッドで開催された女子ロード世界選手権でアルカンシエルを獲得した。彼女は20年間に渡り英国のTT界に君臨し続けた女王、ベリル・バートンを最初に破った選手でもある。絶頂期にあった彼女のキャリアは、故障により急速にその輝きを失ってしまった。彼女は今、オールドハムのスローサ・サイクルで走っている。





 マンディへ

 あのグッドウッドの世界選からもう30年も経っているのね! ぞっとしちゃう。
 あの時代、もし私がなにか別の方法を試していたら...いや!そんな事なんてない。私はいつも完璧だった! でも残念ながらトレーニングに関しては試行錯誤の時があったわね。私が教えられてきた美学「ペダルを踏め踏め、もっともっとだ!」主義のせいでね。
 嬉しい事に、どんな厳しいトレーニングや流した涙も、アルカンシエルを身に纏った事で報われたわ。でもその幸せはほんの些細な事で崩れてしまった。

 悔いが残るのはクロス・トレーニングを試みなかった事。ストレッチ、そしてコア・トレーニング。もしも、当時の私がその大切さに気がついていたら、後になって私のキャリアを終わらせた、あのふくらはぎの断裂と背筋のダメージを防ぐ事が出来たかもしれないわね。

 あたなはいつも、今その瞬間を生きていた。次のレース、トレーニング、そしてあなたが最も欲しかった勝利 - 母国で開催される世界選手権でアルカンシエルに袖を通す事。でもその後はどうだった?あなたには、突然メディアに注目され、追い回されるという状況を助けてくれる人が必要だったの。数え切れないインタビュー、祝賀会、ディナーのお誘い、そういうもののあしらい方をね。
 もちろん全てのお誘いを受けられればそれは素敵でしょうけど、あなたにはそんな義務はないのよ。あなたはNOと言える勇気を持つべきだわ。負い目に感じる必要なんてない。だって、もしあなたが真剣に次のシーズン、そして最も難しいタイトルの防衛の事を考えていたら、あなたがすべき事はディナー会場で微笑む事ではなく、トレーニングに集中する事だって気がついたはずだもの。

 最後に一番大切なアドバイスを。良いスポーツ心療師を見つけて頼りなさい。あぁ、その時それに気がついていたら!
  あなたはトレーニングでも、レースでも、そして人生でも大きな浮き沈みを体験するわ。どれひとつとしてあなたの思い通りにはならない。あなたはいつも思うの。「私はいったいなにをしているんだろう?」って。あなたには話せる相手が必要。それはコーチじゃない。誰でもいい、あなたのモチベーションを高めてくれて、あなたが本当に必要としているものを思い出させてくれる人が。

  今の私のこんな繰り言をスパッと解決する方法を思いついた!タイム・トラベルよ!ドクター・フーのタイムマシンをすぐに借りてきて。そして2014年にいらっしゃい。じっくり話したいわ。

  問題は解決ね。
  幸せになって。
  愛を込めて。

  マンディより

  xx(kiss)





現在の彼女のチームハウスの写真










2014年12月7日日曜日

[翻訳] Letters of Note :若い自分への手紙 <ベルンハルド・アイゼルの場合> Rouleur ISSUE 50

やぁ、21歳のピチピチバーニー坊や!

だいたいお前に俺がいろいろアドバイスしたところで、お前が絶対に大人しく聞くようなタマじゃねぇって事はお見通しよ!wwwwwwwwww。
なんつってもお前のモットーは「俺様サイコー!」だからなっ!

俺は未だにTシャツの袖をまくってジーンズで颯爽と歩く(訳注:加勢大周)スタイルがイケてると思っているぜぇ!

周りが言うにはよぉ、お前には若者ファッションは無理だってよ!

がっつり走れや!


バーニー様より愛を込めて。

[翻訳] Letters of Note :若い自分への手紙 <トーマス・デッケルの場合> Rouleur ISSUE 50

アマチュアでの輝かしい戦績をひっさげて、デッケルは2005年にラボバンクでプロデビューを果たした。デビューの後、ティレノ・アドリアティコ、ツールド・ロマンディ、ツールドスイスのステージを立て続けに制していく。2009年7月、18ヶ月前の尿サンプルからEPOの痕跡が検出された。オランダの期待の星だった彼は2年間の資格剥奪を経て、現在はワールドツアーチーム、ガーミン・シャープで走っている。




親愛なるトーマス

 君は30歳の誕生日の今日、自分に向けてこの手紙を書いているよ。
今では君も年をとって時々昔を振り返るようになった。君のこれからの人生は走馬燈のように流れ、そしてある朝、一本の電話で突然歯車が狂うんだ。その日付は生涯に渡って君の記憶から消える事はない。
 2009年7月1日 12時20分

 君はラボバンクと初のプロ契約を結んだ。そして成功はこれから簡単に転がり込む。プロとしての最初のトレーニングキャンプ、君はまだ二十歳で、そしてその才能は抜きんでていたね。オランダは次世代のマイヨジョーヌ候補として君にプレッシャーをかける事になる。だけど君はそれすら楽しんでしまう。プロとしての最初の1年、君はプレッシャーなんて感じない。そしてドーピングに手を染める事なんて夢にも思わない。

 だけど君はそのうち気がつく。君の周りの誰がドーピングをしているのかを。感じよく、誰もが君に誠実に接してくる。スター選手達、スタッフ、そしてドクター達。皆が君の成功を願っているんだ。そいて君に「手をさしのべて」くれる。
 彼らを責めてはいけないよ。それは君がいた世界だ。その時代、君はそこにいたんだ。君は2006年からドーピングに手を染める。「これがプロの世界なんだ」:君はいずれこう思うようになる。周りは皆ドーピングをしている。だから、君も同じ土俵に立たなければいけない、と。すぐに君はその世界に順応していく。

 君はイタリアに行き、6ヶ月の間、家族とも友達とも離れてホテルで過ごす。プロ生活をベストコンディションで始める為に。その努力は報われ君はティレノ・アドリアティコを制するんだ。
 君は若く、アドレナリンを友に走り、素晴らしい成績を残し、大金を稼いで有頂天になる。ドーピングがバレる事なんてありえないとさえ思うだろう。でも、フエンテスが拘束され、2008年からバイオロジカル・パスポート(blood passport)が導入されて、君は初めて気がつくんだ。これはヤバいって。
 君は長い長い間、最低野郎になるんだ。大金を稼いだ若者にはありがちな事だ。そして君にドーピングを止めろと言ってくれる人間は誰一人いない。
 君はこの火遊びの危険さに気付きドーピングから手を引く。君は破滅が訪れるまでの半年間、ロットで走る事になる。

 2009年7月1日、運命の電話のベルが鳴る。君はその時こう思うんだ。「ありえない!僕はこの半年間ドープしていないし、なによりも僕自身がそれが真実だって知ってる!」でも、それは2007年から遡ってのサンプルテストなんだよ。君は電話をかけてきたUCIのアン・グリッパーにこう言うんだ。
 
 「ありがとう。僕の人生をメチャメチャにしてくれて。」

今まで遡及テスト(過去にさかのぼってのサンプルテスト)で捕まった奴はほとんどいなかった。君は思う。なんで僕だけ?

 ドーピングを止めてからの半年間、君は再び自転車に乗る幸せを噛みしめていたね。クリーンなレース、カンチェラーラとマルティンに次ぐツールドスイスTTの3位。そしてツールド・フランス。
 今、君の人生は大きく変わり、大きな歯車が動き出していくんだ。
 
 父さんと母さんにこの事を告げるのはとても辛い体験になる。君は一人きりだ。君は気がつく。自分には本当の友達はほどんどいないって事に。君と飲んでくれる友達さえもだ。電話の後の最初の1年、君は全てを失う。毎日飲んだくれて空虚なパーティー三昧、まるでまともな子供時代がなかったゴロツキのようにね。君はアルコールと運動不足で6ヶ月で16キロ太る。キャリアの最初の10年は光の速さで過ぎたよ。だけど、サスペンドの期間はまるで石のように時がのろかった。
 
 サスペンド明け、君はサイクリングの世界に戻ろうと決意する。ルール的には問題はない。だけど戻る事は容易ではない。それに君はすっかり自信をなくしていたんだ。君はドーパーだ。だけど最後の半年、君は確かにドーピングの助けを借りずに多くのレースに勝てたって事実を君は忘れていたんだ。
 君がカムバックしようとする時、君の名前はブラックリストに刻まれている。君と契約してくれるチームを見つけるのは容易じゃない。君が若かった時の心の拠り所を思い出すんだ。「いつもベストでいる」って。
 
 後からあれこれ言う事なんか簡単なんだけどね。君はナイーブなんだよ。でも多くのサイクリストはそのナイーブさ故に同じ君と間違いを起こすんだよ。君は痛い程この件で学ぶ事になる。自分は普通の人よりも破滅型だってね。

 君はドーパーになるんだ。死ぬまでこの烙印は消えない。この経験は君を多少ましな人間にしてくれる。でも言っておくよ。ドーパー時代が君のキャリアの頂点ではないんだ。
 
 最後のアドバイスだ。サイクリングを、今君が生きている瞬間を精一杯楽しんでみろ。この世界はあまりに速く、そして君は自分が何をしているのかさえ分かっていない。日記を書くんだ。そして、オランダのメディアとオープンで良い関係を築くんだよ。君が苦しい時、彼らが助けてくれるからね。
 
 人の期待を裏切るな。そして18歳の時の君を貫き通すんだよ。僕はただ君に幸せになって欲しいだけなんだ。そして自転車に乗っている限り、いつも君は世界で最も幸せな男なんだよ。
 
 がんばれ。
 
 トーマスより
 

2014年11月24日月曜日

[翻訳] Le Métier - プロサイクリストの1年 :デイビッド・ミラーによる序章

Le Métier


こいつは、俺がアマチュアとしてフランスでレースを始めた最初の年に何回も聞かされた言葉だ。フランス語はからっきしだったから、とりあえずチームでよく聞く単語を片っ端から覚える事にした。putain(娼婦)、tant pis(まぁ、いいんだけど)、chaudière(ボイラー)なんていった頻出単語と一緒にLe Métierがあったんだ。Le Métierが他の単語と違うのは、こいつはダイレクトに英語に訳せない事だ。辞書でもさっぱりなんで、最初の年どころかその後数年経っても、俺はLe Métierという単語が何を意味するのか本当のところさっぱりだった。後になって、Le Métierの本当の意味が分かった時、俺はその言葉が大嫌いになった。

 当時のフランス自転車界の時代遅れでかび臭い世界の中では、全てにきちっとした科学的裏付けがある近代的トレーニングは、俺とは無縁の世界だった。Le Métierはそんな時代遅れのフランスに残った迷信、前世紀の遺物だった。つまりは、”サイクリング世界の偉人達(訳注;コッピ、バルタリの世界から、アンティクル、メルクス)はこうやってレースをしていた。だからお前達も、偉大な先輩達ときっちり同じようにしなきゃいけない”って事。"選手にはエアコンはよくない"って言われたって、俺がガキの時育った香港じゃそいつがなけりゃ過ごせなかった。"寒い時にはネックウォーマーを首に巻け"って?、ガキの時のお袋の小言じゃねぇての。"レッグ・ウォーマーをしてはいけない"だって?いいつけを守った結果が、今のオレのざまだぜ。たいした効果はねぇ。こういったくだらねぇ、かび臭ぇ迷信、そんな古くさいプロ・サイクリングの世界が俺は大っ嫌いだった。
 
 10年が経ち、いくつかのフランスチームと、他の国のチームを渡り歩いて、俺は少しづつ、大嫌いだったかび臭い迷信達が持つ本当の意味が分かりだしてきた。そしてその言葉に感謝するようになった。
 Le Métierが持つ本当の意味は、犠牲を払う事(sacrifice)、智恵を絞る事(savoir-fair)、そして情熱を持つ事(passion)。これが、この競技がライダー達から人生の全てを奪い、プロ・サイクリングを他のスポーツと決定的に違うものにしている呪文だ。そして驚く事に、科学的トレーニング万能の時代になり、いろんな科学技術が取り入れられ、そして流行のメソッドをプロサイクリングの世界が取り入れてきた現代において、Le Métierという言葉が持つ価値観はなんら変わらず、それどころか、その本当の価値は輝きを増している。

 Le Métier。そいつは伝統、経験、プロ・サイクリングの歴史が蓄えた英知だ。
 
 若かった時、俺はレースが大好きだった。俺がバイクに乗る理由はたった2つだけ。トレーニングか?レースか? 年を取って、もうちょっとマシなプロのレーサーになった時、俺はもっと深く深くバイクと恋に落ちた。俺はずっとプロサイクリストだが、乗る理由はもう鍛錬や勝つ事じゃない。今の俺がバイクに乗るのはもっと大切な理由、愛からだし、バイクは未来永劫、俺の情熱だ。
 
 サイクリストにとって1年で最悪のシーズンである冬は、今では俺の一番のお気に入りだ。ツールの間、マイケルと俺は12月のトレーニングライドが待ちきれねぇって盛り上がっていた。朝に俺達は待ち合わせて純粋楽しみの為だけにバイクで出かけるのさ。俺達の幸運の女神に感謝しながらな。今じゃ俺達は老いぼれプロだ。まぁ、良く言えばベテランって事で、俺達は数限りないレースをくぐり抜けてきた。もうキャリアの終わりが見えてきた今でさえ、これまで以上に走りたいと思っている。いろんな経験を積み、ふりかえり、そして成長した事で、俺達はやっとこの言葉に納得し、感謝出来るようになった。引退したらLe Métierという言葉を懐かしく振り返るだろう。
 
 大っ嫌いだったこの言葉も、今では俺達の宝物だ。
 
 
デイビッド・ミラー

2014年11月23日日曜日

[翻訳] Le Métier - プロサイクリストの1年 :クリスチャン・ヴァンデ・ヴェルデによる序文


Le Métier the seasons of a professional cyclist 
マイケル・バリー、カミール・J ・マクミラン著

Métier:(仏)(名詞) 
職業、専門職 

訳者まえがき


友人から紹介されたこの本は、プロ・サイクリストの目で見た1年の記録が描かれている。
華やかな戦績の記録ではなく、プロ・サイクリストのありふれた日常(Standad Daytimes)を生き生きと写真と文章で綴ったこの本に、たちまち魅了されてしまった。

評論的な事を書くよりも、元ガーミン・シャープのクリスチャン・ヴァンデ・ヴェルデが書いたこの美しい序文が、この書籍の素晴らしい紹介になっているので拙訳ではあるが紹介したい。

プロ・ロードレースのファンだけではなく、全てのサイクリストにも響く彼の言葉は、率直で飾り気がない。

Métierのラテン語の語源は「召使いとしての職務」である。
意図されたものかどうかは分からないが、本書の内容の暗喩にもなっている。




FOREWORD(序文)


 その峠を登る僕らに、容赦ない横殴りの雪が吹き荒れていた。
いつもは山を登るサイクリストの遅さにイライラとクラクションを鳴らしてくるドライバーも、この悪天候に無謀な挑戦をする僕達に短いクラクションでエールを送ってくる。
「今日この道に来たのは、俺達が初めてらしいな。」
コロラドの稜線を走る新雪に覆われた標高900フィート(約2700メートル)のグラベルを走りながら、マイケルが僕に言った。
この場所には僕らが登ってきた道以外には迂回路がない。いくつか見える小さな轍は、恐らく鹿の痕跡だろう。
「そうだな!バリー。この天候でここまで登ってくるような馬鹿は僕達以外にはいないだろうさ」
僕は凍える息を吐きながら答えた。もちろん、僕はこの馬鹿馬鹿しい旅の全ての瞬間を心の底から楽しんでいた。僕達は山から帰る前にカフェで暖をとり、そして大急ぎで家まで帰った。
10年経った今でも、この記憶は僕の脳裏に焼き付いている

 マイケルは僕がこれまで考えもつかなかったようなトレーニンライドを教えてくれた。
マイケルは僕だけではなく、僕の友達にも(必ず二人きりでだったが)実地で意見をくれて、僕達を1つ上のレベルに押し上げてくれた。
僕はこれからも、雪まみれになってかじかむ指を感じながら、いろんな山に登る事だろう。でも僕はどんな時でも楽しめる。マイケルは僕に教えてくれたからね。
「限界とは単なる思い込み」だって。

 僕達はその日、文字通りまだ誰も踏みしめた事のない道を、肩を並べて一日中走った。その時サドルの上で、僕らはこれまで以上に深く理解しあう事が出来た。トレーニングだったり、レースだったり、僕達は様々な経験を経て、お互いに成長してきた。
 
 馬鹿みたいにキツかった2005年ジロのあるステージで、その日の仕事を終えていた僕達は、いつのまにかプロトンから遅れていた。他のライダーが一人も見えないドロミテの登りの途中でたった二人きりだ。レース開始から4時間で、僕らの前にはまだ60キロの行程と、2つの山が待ち構えていた。ヤバい状態にもかかわらず、僕は二人で以前肩を並べて雪の中を走っていた時の事を思い出し、突然笑いがこみあげてきた。そしてそのまま二人で先頭交代をしながらプロトンの追走を開始した。その時のジロの出走選手は200人近く、だけど、その時のドロミテは完全に僕とマイケルだけだった。メイン集団ははるか前、そして遅れた選手のグルペットははるか後ろだ。マイケルは僕になんで笑っているんだ?と聞いた。
 「完全に僕達二人っきりだな!もしお前が、ここがコロラドの例の雪の稜線道だって言うなら、僕はころっと信じてしまうだろうな!」
 「僕達はもう8時間近く走ってる!このステージが終わったらきっとボロボロだよ!でも...」
 「でも、きっと満足しているんだろうな」
この日の出来事は、今でも色あせない思い出だ。

 この本は、僕の子供時代からの、素晴らしく、ありふれた、そしてぞっとする記憶を蘇らせてくれる。バイクに乗っていた時、そしてバイクに乗っていない時の思い出。 
ペダルの一漕ぎに消えていった思い出したくない、あるいは忘れたくない匂い、音、そして感情の渦を。マイケルとカミールは、ここで語られるサイクリストの<ありふれた日常>を撮影し、サイクリストの人生を綴った。彼らはプロ・サイクリングの世界のきらびやかなベールを剥がし、その下に隠されたリアルな現実を白日の下にさらしている。美しく、あるいは醜い現実を。

 敗北と栄光、そして躊躇を繰り返し、僕らは走り続ける。辛い時には、この世界から逃げたいと思った事もあった。あきらめの悪さと我慢強さにより、幸か不幸か僕はまだこの世界にいる。もがきが、よりそれぞれの瞬間を豊かなものにしているように思える。本書 Le Métierは、かつて僕が味わった苦い思い出を僕の脳裏に蘇えさせる。いつか僕の子供達にこの物語を読み聞かせたい。あの子達にも分かるだろう。はるか昔、まだお腹が出る前のパパが何をしていたのかって。

 このスポーツは僕の心に蒼いナイーブさを残し、僕の逃れたいという願いを何回もつなぎ止め、そして皮肉な事に、僕の肉体的老化を加速させているようだ。自転車は僕に責任を、人生観を、謙虚さを植え付けて、僕を急速に大人にさせたけれども、僕の心はどこかまだ23歳の若者の時のまま取り残されている。
 
 この本を楽しんで読んで欲しい。君達はこの本を通して理解するだろう。
なぜプロ・サイクリストになろうとする人が少ないのか。そして、なぜ、僕達プロ・サイクリストがこの仕事に誇りを持っているのかを。


クリスチャン・ヴァンデ・ヴェルデ

2014年11月20日木曜日

[翻訳] 愛から憎しみへ -ラクラン・モートンの場合 (cycling central)

成功したアスリートの定義とはなんだろう?

これは先週のCycling Central Podcastでも、いわばホットな議論として取り上げた話題だ。

多くの勝利を手にする事だろうか?



もちろんそんな事はない。
レースの勝者はたった一人だけだし、1シーズンには勝利出来ないレースなぞ山のようにある事を考えれば当然だ。
加えてプロフェッショナル・サイクリストの世界では、エースになれる確率(つまり、より勝利に近づける確率)は、わずか5%以下であり、多くの選手はアシストや、良くてセカンドエース(スーパーサブ)の役割に甘んじなければならない。
この点は我々の世界とプロの世界は変わりがなく、プロサイクリングの世界は現実世界の箱庭と言える。

また同時にプロ・アスリートの世界では、特にリーダーやスーパーサブの役割を担う選手は、相応の成績を期待されて契約金が支払われる。勝利はスポンサーへのアピールであり、翌年のワールドツアーへの入り口であり、契約の延長の鍵といった未来への原動力なのだ。

現代のプロ・サイクリスト、特にワールドツアーレベルのサイクリストは身に染みて感じている。彼らの仕事は彼らの人生そのものであり、また逆もしかり(vice versa)なのだ。もしも彼らがトレーニングや戦術、心理面、リカバリーで十分な用意なしにレースに挑んだ時、彼らは途端に貴重な戦力からお荷物に変わってしまう。チームにとってもそうだし、彼ら自身にとってもだ。


ラクラン・モートンのガーミン・シャープでのキャリアは、彼のような早熟の才能を持つ若い選手でさえ、簡単にキャリアのレールから外れてしまうという興味深い事例である。
彼の身体は第一線で走る事を欲した。だが、彼の心はそれについていけなかった。

「僕はこの決断を後退とは思わない」ラクランは、彼の兄ガスと一緒になるジェリーベリーとの2015年度の契約をこう語る。


「多くの人はそう思うだろうね。でも、僕はこう思うんだ。この決断はただの<自転車乗り>としての僕の大きな一歩になる。身体が純粋にそれを求めているんだ。レース・シーンに戻り、そしてただ「勝つ」為にレースする。仕事を片付ける為にフィニッシュラインを通るんじゃない。純粋に身体を躍動させて勝ちたいんだよ」

おそらく、ラクランは彼が我々に語ってくれた以上に、自分にそう言い聞かせているのだろう。


心情的には彼の言う通り、これは前向きの決断だと思う。しかし現実的には、ワールドツアーチームから、米国籍のコンチネンタルチームへの移籍は、2歩後退と言わざるをえない。

確かに、ワールドツアーの厳しさと慢性的なプレッシャーは凄まじいものだ。しかし同様に、たとえワールドツアーがそういう世界であっても、あなたがプロ・サイクリストになりたいと望み、ワールドツアーレベルの才能を持っていたら、やはりこの生態系に逆らうのではなく、適合していかなければならない。

そう、彼はプロツアーの大釜のようなプレッシャーをもう受けないだろう。そう、彼はプロツアーのように酷いスケジュールでレースを走る事はもうないだろう。そう、彼はそこで多くの勝利を手にするだろう。そしてイェス、彼はおそらく、新しい世界を楽しむ事だろう。

だけど、ラクランはまだプロ・サイクリストであるという呪縛から決して逃れる事は出来ない。ガーミン・シャープでのキャリアと同じように、彼は成績の為に稼ぎ、力を求められ、そして翌年のシーズン終了後、その次、あるいはその次のシーズンに彼は自分を最も悩ませているものの正体に気付くかもしれない。輝かしい才能にもかかわらず、ラクランはその事実にまだ気がついていない。

2006年、テニス界の王者アンドレ・アガシは、彼の21年のキャリアを締めくくる最後のトーナメントであるUSオープンの前日、ニューヨークのホテルで目覚めた時に、とてもショッキングな事実に気がついた。

「僕はテニスで生計を立てている。しかし、僕は同時にテニスを憎んでいる。深くほの暗いこの憎しみは、常に僕とテニスの間にあった。」

ここで1つの疑問が沸く:何故彼はそれほど長い間、トップレベルでプレイし続けられたのだろう?

「テニスは彼にとって職業以上のものになったのです。テニスはある意味、彼の人生を乗っ取ったのです」
英国の元プロ・テニスプレイヤーであるバリー・コーウェンはガーディアン紙に語る。

「あなたがトップレベルのテニスプレイヤーなら、年間30週以上はツアーに出ているでしょう。加えてトップを維持するという事は、その間の人生の全てをテニスに捧げるという事になるのです。あなたが下す全ての決定は、全てテニスに無意識に繋がっているでしょう。多くのテニスプレイヤーが20代で燃え尽き症候群に陥るのはこういった理由なのです。」

我々がアガシやモートンの気持ちを理解するのが難しい。我々がするスポーツは一瞬の気まぐれ、退屈な日常からの逃避でしかないのだから。でもテニスやサイクリングが一瞬ではなく、毎日、永遠に、あなたの人生を掩うとしたら?

「私にもこういった経験があります。6歳ぐらいからつきまとう感覚ですよ。」コーウェンは語る。「”もしこの競技に100%人生を捧げられなくなったら途端に置いて行かれる”- 一般人はそのような恐怖には耐えられません。多くのアスリートが競技を憎むのも当然ですよ。その気持ちを正直に話すアスリートはほんのわずかですがね」

ビクトリア・ペンドルトンもまた、自分の競技を憎むようになった一人だ。競技、そして彼女自身、そして彼女の業績に対しての憎しみ。
勝利の瞬間だけ、少し解放されたような気持ちになったそうだ。

「あの時、私のメンタルはボロボロだったの」
と、彼女は北京オリンピックのマッチ・スプリント(訳注:トラック競技の一種)で、長年のライバルであったアナ・メアレスを2-0で破った時の経験を振り替える。

「私はチームで一人きり取り残されるんじゃないかって不安だったわ。だから勝った時だけは安心出来た。というか、拍子抜けって感じかしらね。ポディウムの上でもなんの実感もないのよ。でも、ポディウムから一歩降りた時、急に不安に襲われたの。「なんてこと!私はいったいこれから何をしたらいいの?」って。私はこの感情を抑えきれなかった。まるで、もう人生に夢がなくなってしまったような感じだったの。」

彼女はどうしたかって?

「私はすぐに私に出来る事に集中したわ。私に出来る唯一の事。もう1つの金メダルを取る事にね。<私にはそれが必要なのよ>」

母国のロンドンオリンピックで彼女がケイリン・チャンピョンに輝いた時、彼女が喜んでキャリアにピリオドを打ったのも当然だろう。(彼女はメアレスに次ぐ銀メダルをマッチ・スプリントでも獲得したが、1周目の進路妨害が問題視され剥奪された)

ガーディアン紙はこう結ぶ。

「スポーツでの心理的、肉体的、そしてトップ・プレイヤーで有り続ける事の苦痛はもちろんとても大きい。しかし、彼らにとって、この競技にはもういられないと気付く事は、それ以上の恐怖だ。もしかすると、多くのサイクリストはアガシと違い、彼らが人生として選んだこのスポーツを憎んでいるのではなく、愛するが故に盲目になっているのかもしれない。」

あなたがTherebouts(モートン兄弟のサイクリングドキュメンタリー映画)を見た事があるのなら、ラクラン・モートンの自転車への愛を理解出来ただろう。
では、あなたに尋ねよう。
彼の自転車への愛は盲目過ぎたのだろうか?

自転車が我々を迷わすサイレンの歌声でない事を願おう。







オリジナル・ソース

















2014年11月17日月曜日

[翻訳] フォイクトからの手紙 (Rouleur Mag)

親愛なるイェンス

最初のプロ契約おめでとう。僕の今の思いと経験を君に伝えたいと思う。
もしかしたら僕は少しばかり君のお役に立てるかもしれない、でもこれからプロの世界に踏み出していく君をあまり不安にさせたくはない。今の君がトレーニングやフランス語の勉強、そしてレースに忙しいのはよく分かっているからね。

僕の最初の、そして一番大切なアドバイスはね、《もっと自分に自信を持て!》って事さ。君は自分で思っているよりずっと才能あるライダーだ。今はまだそれに気付いてはいないけどね。力任せに序盤からアタックしない事。もっと格上のライダーとの逃げに乗る為にその力を温存しておこう。君なら彼らについていけるよ。

君のモットーを大切にする事。サイクリングの世界の基本原則さ。《最も苦しんだ奴が最も大きな成功を掴む》

プロの世界は凪の楽しい船旅じゃない。君は心身共に苦しい時期をいくつか経験する。その苦しい時期に、自分を汚すような事をしてはダメだよ。

君には大切な家族がいる事を思い出すんだ。そして家族と仕事の公平なバランスを保つ事。人生にはサイクリングなんかより大切な事がたくさんある。

自分への投資を忘れずに。スペイン語も習っておいた方がいい。語学力はいつの時代でも君の助けになるよ。

最新技術のチェックも忘れずに。それはまったく新しい素晴らしい世界だ。
全てのファンに平等に接し、彼らに敬意を払いたまえ。ファンがこの世界を素晴らしいものにしてくれているんだから。
他の全てのライダー達に敬意を払うんだ。このスポーツでは、皆が献身的に働き、この世界で生計を立てたいとただ願っているのだから。

もしかすると、君はジオ・キャッシング(全地球規模の位置情報宝探しゲーム)を発明するかもね。こいつは楽しい遊びだ。それから釣りに行ったなら、うーん、とにかくなんでもいいから釣り上げるんだぞ!

でもさ、ヤング・イェンス。君は君のままで馬鹿正直でいればいいんだ。君は大丈夫だ。なぜなら僕は年をとった君だからね!

君のともだち。年寄りイェンスより。




Dear Jens,

Now that you’ve signed your first pro contract, let me share some of my thoughts and some of my experiences with you. Maybe I can help you a little bit. I won’t get too much on your nerves, I know you are busy with training, learning French vocabulary and racing.

My first and most important advice – have more confidence! You are much better than you think, you just don’t know it yet. Don’t always go with the early attacks, save it for the big attack with the bigger riders, you can go with them.

Keep your work ethic: in cycling it’s pretty clear – the one who trains most has most success.

It will not be a pleasure cruise, you will go through some mentally and physically straining times – don’t let yourself get pulled down by bad periods.

Remember you have a family, balance it fair, don’t get too much of a tunnel vision, there is more in life than only cycling.

Maybe don’t be lazy and learn the Spanish language, it’s always good to speak different languages.

Keep up with modern technology – it’s a whole new interesting world. Really important: treat all the fans fair and with respect, it’s them who make our sport great. Respect all the other riders, because in this sport every rider works hard and just wants to make a living.

If you can, you might invent Geocaching, or start earlier with Geocaching, it’s a fun hobby. And when you go fishing – damn, just catch something!

But hey, my young Jens, stay simply as you are. You will be fine, I know it because I am the older you!

Your friend, the older Jens!



オリジナル・ソース

2014年10月22日水曜日

第二章: <さっさと走り出せ -1!>: GET IN YOUR FUCKING CAR : Pro Cycling on $10 a Day: From Fat Kid to Euro Pro

 2007年、僕に唯一声をかけてくれたチームは、NYのU25アマチュア・チーム、サコネットだけだった。
(Sakonnet。これはBonnetの韻を踏んでいる。だけど、皆、「チーム・しゃぶりん棒(team suck on it)と呼んでいた。)
チームはVMGの成功を、より少ない予算で真似しようとしていた。だからサラリーはなし、でも、バイクと交通費は支給してくれた。
このチームもVMGと同じようにクッターウンに拠点を持ち、そしてデイビッド・ガッテンプランと契約していた。同じ町に戻れるのは嬉しかったよ。ベイジル・マウツポロスがチーム・マネージャーだった。彼はNY在住だったけど、フロリダ大学に進学していた。だから、トレーニング・キャンプは僕の実家があるゲインズビルのすぐ近くで行われた。

 サコネットはNYにあるソフトウェア企業だった。どうやら、将来発電予定の電力を扱う先物市場があって(同じように、使用済みの電力も売れるらしい。聞いた話だけど)、サコネットはこの取引を行うソフトウェアを開発していて、そしてこの市場で成功していた。
アマチュアのサイクリングチームがこの商品の宣伝になったかって?いやいや、そんなことはない。だけどサコネットの三人の創業者は皆サイクリストだった。そしてそれは、彼らにとって10万ドルの小切手をポンッと切るには十分な理由だった。

 創業者の一人、サーストン・バニスターはトレーニングキャンプを訪れた。彼は顔色の悪い、ちょっと肥満気味で、強い英国訛りと典型的な英国人の歯並び、そして金持ち特有のユーモアを持った男だった。サーストンが補食もなく、一本のボトルを持っただけでスタート地点に現れた時、僕らは彼がちゃんとついて来られるか心配だった。でも、彼は100マイル(160キロ)以上の距離を文句も言わず走りきった。その夜、僕らは彼がロジャー・バニスターの息子だと知った。ロジャーは史上初めて1マイル4分の壁を切ったランナーだ。血は水よりも濃いって奴だ。
 
 アマチュア・レーサーは、ほとんど地元でだけ走る。だから、僕は東海岸出身の新しいチームメイト達をまったく知らなかった。何人かのハリウッド・セレブ風のゴージャスな名前以外はね。クリス・カール、ジョニー・ハインズ、そしてガイ・イースト。ほとんどのチームメイト達は、ジュニアでの5年間を順風満帆に過ごしていなかった。彼らは少なからず故障をかかえたり、燃え尽きちゃっていたり、それでも、以前のチームメイトよりは多くのタイトルを獲っていた。僕らはある意味「選りすぐり」と言えた。それでもなお、まだこのチームには「がんばれベアーズ(Bad News Bears)」臭が残っていた。サコネットは子供達に良い環境を提供する為のU23育成チームとしてスタートした。その後、子供達のある者はプロになり、ある元は引退してカタギの仕事につくのだ。人生の岐路だね。それは正しい自然の摂理だったのだけど、何人かは道を決めかねてずるずるとチームに居残ったので、チームは高齢化が進み、U23育成チームからU25育成チームになった。ベイジルは慈悲深い男さ。このことは、何人かのチームメイトに、「成績やトレーニングって、このチームじゃさほど大切じゃないんだ」という印象を抱かせた。もしもスポンサー資金が尽きることがなかったのなら、サコネットは今ごろ同じ構成(ロスター)のままでマスターズチームになっていただろう。




(続く)



Phil Gaimon


2014年10月10日金曜日

[舞台脚本] PEOPLE GET READY

-舞台暗転
-ディーゼル列車の走行音(ガタン、ガタン、ガタン、ガタン......)
-イタリア語での社内アナウンス。(シニョレ、シニョラ、ボンジョルノ....この列車は間もなく.........)



鏡:その時だぜ!オレのくそったれなチェーンが切れやがったんだよ!それもエッフェル塔の下だぜ!


-舞台、薄く照明
-窓から差し込む日差しが列車の音とともに揺れる
-窓の外はイタリアの田園地帯
-列車の客室 ゆっくりライトアップ
-1等客室 室内には鏡とカンチェ
-鏡は足を投げ出して、スコッチのグラスを片手に持ちながら話している。
-カンチェはゆっくりと本を読んでいる。


鏡:その時のランスの表情ったら!お前に見せたかったよ!あそこでチェーンさえ切れなければ、オレが奴を抜いてマイヨ・ジョーヌだったのによぉ! まったくあのくそったれなチェーンのお陰でオレの手から、こうスルスルっと女神様の手が抜けていきやがったのさ。

-カンチェ、本から顔を上げずに

カンチェ:先輩?

鏡:なんだよ?今いいところだぞ?

カンチェ:3時間前、荷物を棚にしまってから、あんたの<魁!鏡風雲録!>一人語りが始まったわけだが...

鏡:わくわくするだろ?

カンチェ:今、2003年という事は、2014年までノンストップで語ったとして、あと10時間その調子か?

鏡:ノンストップじゃねぇぞ

カンチェ:そうか、それを聞いて安心した。

鏡:(ニヤッと笑って)オレのトークには燃料補給が必要なのさ(笑)空中給油の時間は別だね。

-スコッチをあおる鏡
-カンチェ、ため息をつき、眼鏡を畳み、本を閉じ、車窓を眺める。

カンチェ:モートンはどうした?

鏡:あいつはさっきの駅で降りた。

カンチェ:乗り換えか?

鏡:いや、奴はただ<降りた>んだ。まぁ、オレも同室だったから薄々感じてはいたんだがな。レールの上を走るのは、あいつの柄じゃねぇ。

カンチェ:何処へ?

鏡:ただ目的もなく歩くそうだ。いつもの完璧でスマートなパッキングで、ふらっと出て行ったよ。「お元気で!」って笑顔でな。

カンチェ:そうか。アレックスはどうしている?

鏡:あいつは若い連中と前の車両だ。退屈で死にそうだって言ってたから、多分部屋でローラーしているんじゃねぇかな。フィルは次の駅で別の列車だ。湖水方面。さっき神妙な顔でノックするからなにかと思ったら、クッキーをくれたよ(笑)。あいつは渾身のジョークの時にはいつもの苦虫をかみつぶしたような顔だ。愛の告白かとびびったぜ(笑)

鏡:アンディは?どうした?暫く客室に籠もっていたろ?

カンチェ:次の駅で降りるそうだ。

鏡:降りてどうする?

カンチェ:ただ、降りるのさ。

鏡:ふーん.......

カンチェ:どうした?

鏡:モートンの奴は、元々ハートの形が線路とあわねぇ感じだ。まぁ、分からんでもない。でもアンディは...

カンチェ:アンディは言っていたよ。僕の夢は列車じゃなくて家族だって。

鏡:その時の奴の顔は?

カンチェ:笑顔だったさ。でもな...

鏡:...そうだろ?

カンチェ:声は震えていたな。

鏡:そうだな。奴の心は自由を求めるのかもしれない。でも身体は轍を求めるのさ。心は風のようでもな、身体は路上の囚人なんだよ。

カンチェ:どうだろうな....

-再び眼鏡をかけ、読書に戻るカンチェ
-その様子をスコッチのグラスを傾けながらじっと見る鏡

鏡:なぁ。

カンチェ:なんだ?

鏡:お前は.....この列車を降りないよな?

カンチェ:降りるさ。

鏡:あっさり過ぎるだろ!お前、あんなに列車が気に入っていたじゃないか!

-カンチェ、再び本を閉じる

カンチェ:考えても見ろ、先輩。あんたがこの列車に乗ってから、どれだけの人間が乗って、降りていった?我々と同じ駅で乗った奴らはもういない。あんたが乗った時、この列車の主のように振る舞っていた暴君(チャンピョン)達ももういない。

鏡:.......................

カンチェ:面白いよな。不世出の王者と言われた男は、石を以て列車を追われた。今では奴が居座っていた客室さえも切り離されている。ジャンキー(ドーパー)共も、騒々しいヒップホップと共にたくさん乗り込んできて、いつのまにかいない。男の中の男、人格の鏡と言われたこの列車の主、イェンスも前の駅で降りた。あの駅での騒ぎを覚えているか?

鏡:あぁ....

カンチェ:あんたは子供の時からあんたのままだと思っているかもしれないが、あんたの細胞1つですら、もう子供の時のものは残っていない。木も鳥も、同じに見える川の流れだって、一瞬でも同じものはない。全ては変わっていくんだよ。

鏡:オレはいやだね。オレはそんな適当で浮ついた気持ちでこの列車に乗ったんじゃない!オレは..オレは、この列車が好きなんだ!なんでどいつもこいつもポンポン乗り換える事が出来るんだ?オレはそれが本当に不思議だぜ!

カンチェ:そうだな。先輩も知らない間に変わっている。若い時は列車にニトロくべて爆発させるヤンチャもしたな。警察にぶち込まれてしばらくこの列車に乗れなかった。

鏡:あぁ。

カンチェ:それでもあんたは荷物をまとめて、この列車に乗った。

鏡:オレはずっと変わらんよ...。

カンチェ:違うな。あんたは毎日死んで毎日生き返っている。ヤンチャの頃も、JVに拾われてまたこの列車に乗った時も。それぞれ別人といってもいい程、あんたは変わっている。面白いのは....

-カンチェは再び車窓を見る。

カンチェ:変わり続けたあんたが、ずっと同じこの列車に乗り続けてきた事だな.....。

-舞台暗転
--列車はトンネルに入る
-ディーゼル列車の走行音(ガタン、ガタン、ガタン、ガタン......)
-暗転の中、鏡の独白



鏡:..お前はどうなんだ?カンチェ。お前にとってこの列車はなんだった?お前には別の列車があるのか?オレには...
鏡:.オレにはこの列車以外にないんだよ.....



-舞台、明転
-窓から差し込む日差しが列車の音とともに揺れる
-列車の客室 ゆっくりライトアップ

-そこにカンチェはいない




鏡:...カンチェ?  (左右を見る)........................そうか............お前も降りたんだな...........................

鏡:...まぁ、いい。部屋が広くて広々すらぁ。まぁ、最初も一人だった。なにも変わっちゃいねぇ。そうだ。何も変わっちゃいねぇのさ。



鏡:(通路側を向いて)おっ、新入りか?よく来たな。オレはこの列車長いんだ。なんでも分からない事があれば聞けよ!
鏡:老害とか言うな!(笑)。じゃぁ、また後でな!後で遊びに来いよ!



鏡:..........................................................................................

鏡:...ふぅ....  今まで気がつかなかったが、意外に広いな、この部屋。
鏡:...ん?なんだ?クロゼットの奥に、コンパートメントがあるぞ?荷物がつまってやがる。.....カンチェの忘れ物か?.....これは....


鏡:...VDVのギターケースだ。あいつ、このフェンダーを命の次に大切とか言っておいて、すっかり忘れて置いていきやがった。ったく、あいつはチマチマ気がつく性格の癖に、肝心要の所が抜けていやがる。1年前に降りたのに、ずっと置きっぱなしかよ!

鏡:まぁ、なんだ....。なにかあいつの大切な荷物が入っているかもしれねぇしな。ちょっと開けさせてもらって...中を......

-ギターケースを開けると、何かが転がり落ちる

鏡:なんだ?なんか小箱と....手紙か?



やぁ、鏡
もうそろそろ僕がいなくて退屈している頃だろう?
だからケースを開けたんだろう?
このフェンダーは僕からのプレゼントだ
お前は物覚えの良い生徒とはお世辞にもいえなかったけど、僕が教えた通り、C、G、E、Fが分かれば大抵の曲は弾ける

暇な時に弾いてみろ

元気でな


p.s.
同封の箱は今朝焼いておいたブラウニーだ。日持ちがするからスコッチのつまみにしろ

クリスチャン




鏡:...って、1年前なんだからブラウニーもう喰えねぇって!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
鏡:本当にwwwwwwあいつは.wwwwwwwwwまったくwwwwwwwwwwwwwww
鏡:間が抜けてwwwwwwwwww喧嘩弱いくせにwwwwwwwwwwwww理屈っぽくてwwwwwwwww

鏡:......................でも、そうだな...................あいつは......そういう奴だ..............


-ギターをじっと眺める鏡


鏡:もう忘れているな....でも、.....そうだな。退屈だ。

鏡:車窓の夕日でも見ながら久しぶりに弾いてみるか....見ててくれよ。先生。


-慣れない手つきでアルペジオをつまびく

-舞台ゆっくり暗転


-ギター アルペジオ イントロ
-舞台下手からゆっくり列車が入ってくる
-列車の車窓から、それぞれの部屋が見える
-ひとつづつ、部屋に照明






People get ready, there's a train comin'
You don't need no baggage, you just get on board
All you need is faith to hear the diesels hummin'
You don't need no ticket you just thank the lord

みんな、仕度はいいかい。列車が来るよ
荷物なんかいらないさ。ただ乗ればいい
素直な心で列車の音だけを聞いてごらん
切符なんていらない。ただ信じればいいんだ



-最初の部屋
-ザックを横に置いてバンダナを巻いたモートン
-窓辺にもたれて沈みゆく夕日を見ている



今から 旅に出よう 荷物は何もいらないさ
夢見た場所が どこかにあるさ
それだけで それだけで




-2番目の部屋
-難しい顔でローラーに励むガイモン
-ハンドルにはテーブルが固定され、クッキーを食べ比べならがレポートを書いている




あの時 僕は君に どんな言葉を伝えられたら
今頃ふたり この朝日を
見れたろうか 見れたろうか




-3番目の部屋
-赤ちゃんを抱いてあやすアンディ
-その部屋の奥には
-段ボールに無造作に放り込まれたマイヨジョーヌ




僕は一人 右を選び 君も一人 左を行く
今は背を向けた サヨナラも
ひとまわり 触れ合えたら
それだけで それだけで




-4番目の部屋
-鏡に向かってゴテゴテとメイクをするJV
-メイクをしながら、ケータイでなにか怒鳴っている
-大げさに手を上下にゆすって
-彼の大きな鏡台の鏡には
-1枚の写真
-2008年ジロ・デ・イタリア
-表彰台でシャンパンを抜いて大はしゃぎでキスをするJVと
-迷惑そうな鏡の写真




People get ready, there's a train comin'
You don't need no baggage, you just get on board
All you need is faith to hear the diesels hummin'
You don't need no ticket you just thank the lord

みんな、仕度はいいかい。列車が来るよ
荷物なんかいらないさ。ただ乗ればいい
素直な心で列車の音だけを聞いてごらん
切符なんていらない。ただ信じればいいんだ










-舞台暗転


終幕


2014年9月27日土曜日

[字幕] Team Garmin-Sharp: On Camera with Alex Howes and Ben King vol.3

They said what?


B.K:なにか今年のレースで面白い事あったかい?他のライダーやチームから聞いた事とか。コロラドとかでは?

A.H:どうかな?覚えているのは誰もが「寒い!寒い!」って言っていた事ぐらいだな。逃げとかでも「寒い!寒い!」って叫んでいたよ。でも見るとウォーマーすらつけてない生足なんだぜ!」

B.K:(笑)ジャケットを着ろよって話だよな!

A.H:寒いっていえばお日様が出てくるわけでもあるまいしな(笑)オレが寒くてシューズカバーをつけようとした時、皆それに文句を言ったんだぜ…

..(´-`).。oO(

——————————————————————————————————


匿名のJ「ドーモ、ハウズ=サン! ドイツ=ジン デス!」

ハウズ「…..あんた、変なラノベでも読んだのか?」

匿名のJ「イヤァァァァァァァ〜! ココデ ナンジャクニモ ヌクヌク メイタヲ スルツモリアルネ?」

ハウズ「いや、最後明らかにドイツ=ジンじゃないだろ?」

匿名のJ「イヤァァァァァァァ〜!ダマレ=コノ=アシ!(SHUT UP LEGS)!!」

(ベン・キング大受け 「wwwwwwwwww ダマレ=コノ=アシ キターーーーーーー!!!イァー!」)

匿名のJ「サイキンノ ワカイ=モン ハ ナンジャクアルネ! JV=サン ナイテイル!」

ハウズ「オッサンの根性論かよ!」

匿名のJ「イヤァァァァァァァ〜! ゴタゴタハ コレイジョウ タクサン=デス!」

ハウズ「ゴタゴタにしたのあんただろっ!」

——————————————————————————————————



B.K:wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 「ドーモ、ベン=サン!チームのホ=キュウ デスカ? オキバリナサレ」


二人:ダマレ=コノ=アシ!(SHUT UP LEGS) 」(爆笑)





(終わり)


2014年9月25日木曜日

[字幕] Team Garmin-Sharp: On Camera with Alex Howes and Ben King vol.2

Eyes on the prize



A.H:来年、ガーミン・シャープでの2年目だな。

B.K:そうだな。

A.H:どこで見せ場を作るか自分の胸で考えているだろう?(←訳注 エラそうな口調で)

B.K:そうだ。

A.H:だよな (←訳注 何故か面接官っぽいニュアンスで)

B.K:あぁ。(←訳注 何故か若干萎縮している)

A.H:どこを狙ってる? (←訳注 しつこくエラそう)

B.K:TOCのステージだね。

A.H:他には?(←訳注 興味ナッシング)

B.K:それも逃げて勝ちたいね。

A.H:他には?(←訳注 興味ナッシング)

B.K:お前が全米チャンピョンのジャージを着る手助けをする事さ。

A.H:(σ* ゚ー゚)σ ☆☆ ソレダっ!!(←訳注 入れ食い)

B.K:今年のリベンジさっ! (訳注:Redemption(贖罪)と言っている。よほど今年が悔しかったのだろう。日本語的に分かりやすいようにリベンジにした)

A.H:((ヾ(o´ω`o)bイエーーーーーーイ リベンジだぜ! (←訳注 アホっぽく)

B.K: 今年は全力を出し切れなかったからな。


A.H:ワォ、暴れるのが待ちきれねぇ!(訳注:この後、妄想モード)


(続く)

2014年9月23日火曜日

[字幕] Team Garmin-Sharp: On Camera with Alex Howes and Ben King vol.1



What’s up next?


A.H:やっとオレ達のシーズン到来さ!2時間ちょっとガーミン本部にいたらお前はバージニアに帰る。さて、その後どうする?
明日の朝、自分のベッドで目が覚めて、お前はこう言うんだ。「ワオ!世界はオレの思いのままだぜ!」(※訳注The World is my oyster.(イギリスの諺。シェイクスピアの喜劇、<ウィンザーの陽気な女房達>が元)。さて、どうする?

B.K: そうだねぇ。いまのところハンバーガーとかピッツァ、メキシカンをキメたいよ。

A.H: 喰ってたろうがよっ!(笑)

B.K: いやいや!(笑)だってアイスクリームはまだ食べてないよ!オフシーズンになったら三日間アイスクリームを食べるんだ!ずっと我慢していたからね。

A.H:そいつはすげぇ

B.K:だろ?願わくばランチタイムあたりに優雅に目覚めたいね(笑)

A.H: ランチにアイスクリームだ!(笑)

B.K: ランチは多分ライドの後かなぁ

A.H: なんでオフにライドやねん!(^_^)√☆ (^ ^; 

B.K:ライドはトレーニングじゃなくて、単にローラーコースターみたいな楽しみさ

A.H: そうかよ…(疑わしそうに)

B.K:そうさ?MTBでポタリングして、友達とアイスクリームを食べるよ。








Single and ready to…




A.H: バージニアに戻って他になにがしたい?

B.K : あぁ…..カップルでラブラブに….(笑)、いや、冗談だ…

A.H: いやまて。ここでハッキリさせておきたいんだが…..(周りを見渡し声を潜め)..お前、独り身だよな?(ニヤ(・∀・)ニヤ )


B.K :…………...( ´_ゝ`).......

A.H : よぉ、兄弟  ψ(*`ー´)ψ

B.K :…………...( ´_ゝ`).......ジュンビハバンダンナンダケドネ……

(空虚な笑いが続く…)

B.K :あぁ、アレックス….お前はどうなんだよ?募集中なのか?

A.H: オレか….(顔をそらして)カム・カム・エブリバディーよっ! ψ(*`ー´)ψ (半泣き顔)

B.K :…………...( ´_ゝ`).......(空虚な笑い)

A.H: オレ達がつるんでいるって事が、チーム唯一の独身二人組になっている原因じゃないかと思いつつあるんだが…

B.K :…………...( ´_ゝ`).......今やオレ達が貴重なガーミン・シャープのピチピチ独り身男ってわけだ...(空虚な笑い)

A.H:オレはチームの脚本にそって(非モテキャラを)演じる事が気に入っているよ。仮面を被るって大事な事だぜ….




二人: フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…….(空虚な笑い)





(後編に続く...)

2014年8月20日水曜日

MANUAL FOR SPEED翻訳記事 (まったリングの王道:読書と昼寝) 後編 (担当:アレックス・ハウズ)

※本記事はMANUAL FOR SPEED MFSM-004の日本語翻訳である。全ての内容は元記事からの引用である。よって全ての権利もMFSに帰属する。



MFSM-004 PART2: 昼寝のまったリング


FIG-1 健康的になる

※MFSから引用



質の高い夜の睡眠を取る事が、必ずしも病気への免疫力をつけるとは限らない。だが、絶え間ない研究の末、睡眠不足は心臓疾患、心臓発作、糖尿病、肥満等の重度の健康障害と関係がある事が判明してきた。

多くの場合、睡眠不足による健康への障害は、何年もたってから深刻な健康問題となるが、いつもそうとは限らない。けれども、10人の健康な成人に対してシフト勤務に特有の不安定な睡眠パターンを体験させた実験によると、実験開始からわずか4日の後に、10人のうち3人の血中ブドウ糖濃度は、初期の糖尿病レベルに上昇していたのだ。



FIG-2 性生活の充実


ツールに備え性生活を断った経験をお持ちの匿名希望A.Hさん. ※MFSから引用



全米睡眠協会による意識調査によると、26%以上の人々が疲れによって性生活に支障をきたしていると感じているという。詳しい因果関係はいまだに明らかになっていないが、男性では睡眠不足はテストステロン(男性ホルモンの一種)の低下によって引き起こされるという証拠も見つかっている。

もちろん、睡眠不足は疲れとか男性ホルモンの低下といかいう以前に、直接的にあなたの性生活にダメージを与える。「もしも君が28歳で、映画館でのデート中にうとうとしてしまうようならば、それは危険信号だ」と、医学博士でもあり、全米睡眠薬学会の広報担当、コロラド睡眠障害センターの専門家であるリチャード・クラマー博士は語る。
(※ハウズ:ヘイヘイヘ〜イ!性生活に問題のある28歳に心当たりありすぎるぜ!)

FIG-3 痛みを抑える


痛みは黒歴史の厨二ブログと語る匿名希望のA.Hさん ※MFSから引用


もしも君が慢性的な痛みや、怪我の後遺症でのひどい痛みに苦しんでいるのなら、十分な睡眠で痛みを軽減出来るかもしれない。
多くの研究で、睡眠不足と痛みの感じ方には関連性があると判明している。しかし残念な事に痛みがあると十分な睡眠を取る事が難しい。

研究者は、質の高い睡眠が鎮痛剤を補う効果がある事を発見した。もし痛みで眠る事が難しいのであれば、鎮痛効果と睡眠導入効果を兼ね備えた薬を服用するのもいいだろう。

FIG-4 怪我の予防になる

女に振られた傷は勲章と語る匿名希望のマッドドッグさん。※MFSから引用



十分な睡眠は君を実際に安全にするかもしれない。睡眠不足はスペースシャトルのチャレンジャー爆発事故や、エクソン・バルデス号の座礁など、多くの重大事故の原因となってきた。米国医学研究所はおよそ5分の1の交通事故が居眠り運転により引き起こされると見積もっている。1年におよそ100万件の交通事故が居眠りにより引き起こされるという計算になる。

もちろん、どのような種類の事故も、あなたが疲れている時に発生する傾向がある。セント・ジョセフ大学生理学教授で、書籍「睡眠不足はもうたくさん」の著者でもあるジョディ・マインデル博士は言う。「あなたが寝不足で疲れている時には、あなたはもうろうとしていたり、ハシゴから落ちたり、野菜を刻んでいる時に指を切ったりしがちです。家庭内のこのような事故は、さらに重大な事故に繋がる可能性があるのです。」

FIG-5 気分が良くなる

ツール・ロスターに入った喜びを太陽礼拝のポーズで表現する匿名希望のA.H.さん ※MFSから引用



十分な睡眠を取る事で、必ずしもリア充的な明るい性格になれるわけではない。でも、疲れている時にはおおむね怒りっぽくなる事は君も経験から分かっているだろう。これはなにも、睡眠不足があなたの機嫌を決めるというだけの話ではない。マインデル博士は語る。「疲れすぎている時、人は上司にキレたり、急に涙が出たり、何故か笑いが止まらなくなったりする傾向があります。」

FIG-6 痩せる

コアトレの時は心で「オレがガーミンだ」と呟くという匿名希望のA.H.さん ※MFSから引用



十分な睡眠はダイエット効果もある。逆に睡眠不足の時には太りやすい。なぜか? 原因の一つは行動面の変化だ。あなたが疲れ切っていれば、仕事の後にジョギングをしたり、ヘルシーな夕食を作る事は難しい。

肥満の他の原因は生理学的なものだ。レプチン(食欲を抑制するホルモン)は、人が疲れている時の満腹感を司る重要な役割を担っている。疲れ切っている人はこのレプチンが低下しているので、純粋な飢餓感が続き、高脂肪、高カロリーの食事を特にガツガツ食べやすい。


FIG-7 思考が明瞭になる

底なしの知恵を草原の広さで表現している匿名希望のA.H.さん ※MFSから引用



寝苦しかった翌朝の目覚めの気分を思い出して欲しい。ボンヤリして、頭はボケて、まるで君の脳がローギアに入ったままのような気分だった事だろう。

「睡眠不足はあなたの考え方に影響を及ぼします」マインデル教授はWebMD(ウェッブの医療サービス)で語っている。「睡眠不足はあなたの認知力を弱めます。あなたの注意力、意思決定能力に影響を及ぼすのです。」研究の結果、睡眠不足の人は論理的判断や数学的問題の解答能力が、十分な睡眠を取った人よりも大幅に劣る事が判明している。「睡眠不足の人は、家の鍵を冷蔵庫の中にうっかり置き忘れてしまうような単純ミスをしやすいのです。」


FIG-8 記憶力が良くなる

ひらめいた戦術アイディアをストレッチボールで表現している匿名希望のA.H.さん。※MFSから引用



物忘れがひどくなったと感じていないだろうか?それは睡眠不足のせいかもしれない。研究によれば、我々が寝ている間に、脳はその日の記憶を処理し、記憶野に定着させる働きをしている事が判明している。もしも十分な睡眠が取れていない場合、記憶は正確に記憶野に定着せず、そして失われすくなるようだ。

さらには、いくつかの調査によれば、睡眠は記憶違いを減らす効果もある。実験では、被験者は最初にいくつかの単語の羅列にざっと目を通すように指示され、後にその言葉をどれだけ覚えているかをテストされた。睡眠不足の被験者達に、実際には見ていない言葉を勘違いして回答する傾向があった。


FIG-9 免疫力が高まる

来年の契約が切れた時の想像をして心の免疫力を高めている匿名希望のA.H.さん ※MFSから引用



十分な睡眠は一般的な風邪を防げるのだろうか? 一つの予備実験が疑問を実際に検証してみた。
研究者は150人以上の人々の睡眠習慣を2週間にわたってモニターした。そして被験者を風邪ウィルスにさらしてみた。

睡眠時間7時間以下の被験者達は、睡眠時間8時間以上の被験者達に比べ、およろ3倍風邪を引きやすいという結果になった。睡眠と免疫の関連性を確立させるには、さらに多くの調査期間が必要になる。結論を導き出すにはこの研究では不十分な事も事実で、他の要員が免疫には関連している可能性もある。それでも、もしそれが可能であるなら8時間睡眠は君の助けになるだろう。























本を読んで
8時間寝たら
健康だし
夜はバッチリだし
落車しても痛くねぇし
痩せて
気分も上々で
イェロージャージじゃねぇかっ!

乗るっきゃねえなっ!このビッグウェーブに!