2016年7月9日土曜日

[RR落語] 客夢(かくむ ) -5/5

(前幕)









フランク:

アンディ、アンディ、起きろ!
そんな格好で寝ていたら風邪ひくぞ!

アンディ:

うわぁ!!僕は帰るんだ!皆のところへ!!

フランク:

うわっ!なんだよ!いきなりホテル中に響くような大声だして!

アンディ:

えっえっ????兄さん?ここどこ?

フランク:

どこか頭でも打ったのか?
ブルターニュのトレック・キャンプじゃないか。お前が来たいって散々ねだったから、無理無理ねじこんだんだぞ。感謝しろ。

アンディ:

何年?今何年?2010年?1986年?1950年?

フランク:


お前、レースから離れて頭おかしくなったのか?2016年じゃないか。1950年なんて生まれる前だし、1986年なんてお前が生まれた年だぞ。

アンディ:

そうか…、ハハハハ、僕は戻ってこれたんだ…。僕の世界に…
よかった…兄さんもいつもの優しい兄さんだ…。

フランク:

お前、頭打って変な夢でも見たんじゃないか?だいたい、これ!これが原因だろ!カンチェさんが送ってきた抱き枕!ったく、このドヤ顔ムカツクわぁ!こんなの使っているから魘されるんだよ。

アンディ:

ちょっと返してよ!そうか…皆、夢だったのか…。どれも生々しかったし怖かったよ。
(みんないつも通りだけど皆少しづつ違っていて。そして僕をずっと問い詰めたんだ)

フランク:

だからそのカンチェさんのドヤ顔抱き枕は棚にしまってもう寝ろ!明日、LSD(長距離ライド)に付いてくるならペース合わせてやらないから覚悟しておけよ。

アンディ:

…兄さん、僕になにか聞きたい事あるんじゃないの?

フランク:

なんだよ?今日はイェンスの鬼引きで殺されかけたんだよ。お前に聞きたい事なんかないよ。さぁ、もう電気けすぞ!歯は磨いたんだな?

アンディ:

うん。…兄さん?

フランク:

なんだ?

アンディ:

ありがとう。

フランク:

子供か!消すぞ。おやすみ。

アンディ:

おやすみなさい。
(日常がこんなにも幸せだなんて思った事ないよ、本当によかった.......)

(消灯)





























フランク:

……なぁ、アンディ?
それでなんの夢を見たんだ?







(Fin)






客夢(かくむ)

-旅先で見る夢、旅寝の夢の意-






David Bowie
Changes








still don't know what I was waiting for
And my time was running wild
A million dead-end streets
Every time I thought I'd got it made
It seemed the taste was not so sweet

今でも自分が望んでいたのか分からないけど
目隠しのまま巻き込まれて
気が付くと行き止まりだった
なにかやり遂げたと思った時にはいつだって
居心地のわるさがいつも付きまとっていた



Andy Schleck
1985-



So I turned myself to face me
But I've never caught a glimpse
Of how the others must see the faker
I'm much too fast to take that test

だから立ち止まって自分自身を見つめ直してみたんだ
ボクはニセモノだったのかなって。皆は簡単に決めつけるけど
それを確かめるにはボクの人生はあわただしすぎるね



Frank Schleck
1980-



Ch-ch-ch-ch-Changes (Turn and face the strange)
Turn and face the strain
Ch-ch-Changes
Don't have to be a richer man
Ch-ch-ch-ch-Changes
Ch-ch-Changes (Turn and face the strange)
Don't want to be a better man
Time may change me
But I can't trace time

みな変わっていく(ひとと違う事を恐れないで)
キミ自身の人生なんだ
同じものなんてない
レジェンドになろうなんて思うなよ
確かなものなんてないさ(鏡で自分を見てごらん)
真人間になる必要なんてないさ
時は幻のように過ぎ去っていくけど
ボクはあの時には戻れないんだ


Jens Voigt
1971-



I watch the ripples change their size
But never leave the stream
Of warm impermanence and
So the days float through my eyes
But the days still seem the same

時には水面にさざ波が立つけど
さざ波はより大きな流れにのまれていく
だからめまいがしそうな日々のうつろいも
長い目で見たら同じ毎日の繰り返し



Bernard Hinault
1954-


And these children that you spit on
As they try to change their worlds
Are immune to your consultations
They're quite aware of what they're going through

だからキミがdisってるあの悪童達、世界を変えようと意気込んでいる青二才達は
キミのお説教なんて聞きやしないさ
奴らは見えているんだ。これから越えていいかねばならない峠が。



Eddy Merckx
1945-


Ch-ch-ch-ch-Changes
Ch-ch-Changes (Turn and face the strange)
Don't tell them to grow up and out of it
Ch-ch-ch-ch-Changes (Turn and face the strange)
Where's your shame
You've left us up to our necks in it
Time may change me
But you can't trace time

みな変わっていく(ひとと違う事を恐れないで)
キミ自身の人生なんだ
大人になれ、真っ当になれなんて言うな
あんたが押しつける常識ってやつで
みんな首までどっぷりで身動きもとれない
時はボクを変えていくけど
ボクはあの時には戻れないんだ


Angelo Fausto Coppi 
1919-1960


Strange fascination, fascinating me
Changes are taking the pace I'm going thru
Ch-ch-ch-ch-Changes
Ch-ch-Changes (Turn and face the strange)
Look out you Rock'n' rollers
Ch-ch-ch-ch-Changes
Ch-ch-Changes (Turn and face the strange)
Pretty soon now you're gonna get older
Time may change me
But I can't trace time 
I said that time may change me
But I can't trace time


人と違うってゾクゾクするね
ボクがボクを変えていくんだ
みな変わっていく(ひとと違う事を恐れないで)
そうだろ?自転車の兄弟達(Rock’n Rollers)?
確かなものなんてないさ(鏡で自分を見てごらん)
真人間になる必要なんてないさ
流されていたらすぐに年寄りになっちまう
時は幻のように過ぎ去っていくけど
あの日のボクはもういないんだ。
そうさ
時間は僕らを変えていく
だから前だけを向いて走っていこう



Fabian Cancellara (as DAKIMAKURA)
1981-